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清野 この太東漁港には、レジャー用の船、釣り船のプレジャーボートであるとか、漁船では特に九十九里浜で盛んな貝の漁業の船があります。ここの貝の漁業は、海底の砂の中にいるナガラミという巻貝であるとか、チョウセンハマグリとか、そういった貝をガリガリッと砂ごと引っかき出して網の中に入れる、というものです。チョウセンといっても、朝鮮半島の朝鮮じゃなくて、潮が浅いと書く、潮浅ハマグリという砂底に生息する貝で、大きな貝です。非常に殻が厚くて、碁石の材料になったりします。これは九十九里浜の生物としても代表的なものです。

ですからここの漁師さんたちは、九十九里浜の沖の砂場が荒れると漁業ができなくなってしまいます。先ほど太東崎のてっぺんから見た離岸堤などが海中に入ると、漁船が操業しにくくなるということで、九十九里浜の砂浜の状態に関しては、ここの漁業関係者たちが非常に問題意識を持っているわけです。

 

これが沖で貝を採る桁網・貝桁という漁具です。これで海底をひっかくと、中に埋まっている貝が、ボコボコッとほじくられて上がってきますので、ここに張ってあるネットでふるい分けをして、残ったサイズの貝が網に入っていきます。ナガラミだとか、チョウセンハマグリだとか、そういった貝の種類によっても、自分の持っている漁具のネットの網目の大きさを調整して張り替えているようです。

こうした漁業を行なううえで、もし海底に人工構造物を入れてしまうと、潮の流れが変わったり、海底が粘土っぽくなってしまったり、漁具が引っ掛かってしまったりということで困るのです。特に海岸に構造物を入れるのを貝の漁業者が嫌がるのは、この機械が使いにくくなるということがあるわけです。

 

長周期波

主に太平洋岸の港湾で問題となっている現象。通常、港湾は防波堤によって港内の海面が静穏に保たれるよう設計されているが、特に周期が10秒から数分といった長周期波は、防波堤の開口部から通り抜けてしまうため防ぐことができない。長周期波は目視ではわかりにくいが、係留船舶に大きな動揺を発生させるため、荷役の際に大きな障害となっている。今のところ有効な対策はないのが現状である。

 

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漁港の船

 

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貝桁

 

ナガラミ

正式名はダンベイキサゴ。キサゴの仲間の中では最も大きな種類で、房総以南の太平洋岸の水深約30メートルまでの浅い砂底に生息する。

 

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チョウセン(潮浅)ハマグリ

ハマグリに似ているが、殻は厚く、膨らみは弱い。殻表に放射状の色帯がない。殻の長さ9.5cm、高さ7cm、膨らみ4cmに達する。九十九里浜など外海の砂底に産する。碁の上等な白石はこの殻からつくられるのでゴイシハマグリの別名もある。

 

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