太東漁港拡大図
清野 昔、九十九里浜の漁港というのは、河口に位置しているところが多かったんです。もしくはこの太東漁港のように、岬の陰になっているところに港をつくったり、あるいは砂浜の波が打ち寄せない高いところまで船を引きずっていくところもありました。それが、戦後になって、漁船を安全に大量に置ける場所が必要だということで、漁港整備が進みました。今日は、その結果として海岸がどういうふうに傷んでしまったかということの、かなり具体的な実例を見ていただきたいと思います。ここは太東漁港というところですけれども、岬の陰に漁港がつくられています。こういう自然地形を活かしたところにつくるのは、昔ながらの知恵ということで、もともと発想としては悪くなかったと思うんです。
宇多 漁港の概況を説明しますと、今、目の前に防波堤があります。その外側には砂の山がありますけれども、これはさっき崖が崩れてできた砂が海を漂ってきた「漂砂」というんですけど、それがここにたまっています。本来、この漂砂はここに漁港がなければ、九十九里浜の形成のためにどんどん流れていったはずです。ところが、今ここは船を入れるための施設として、とにかく波が入ってはならない、波を消したいということで、こうやって防波堤で囲ったのです。漁港の外の波があんなに大きいのに、漁港内はほんの10cm ぐらい波が動いているだけですよね。ということは、この防波堤は非常に効果的と言えますが、砂のほうは流路を遮断されてしまったんで、仕方なくそこに沈殿する。ですから防波堤ができた今は砂がたまる一方で、これがどんどんたまりますと、風で飛ばされて最終的にこの防波堤の内側にも砂がたまるんです。