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今、清野先生が拾っている崩れ落ちた崖のかけら、触ってもらうとわかりますが、すごくボロボロの泥岩です。これは乾いているから、結構固いと思うかもしれないけど、実際は実にもろい。

それで、これが崩れるのは、乾湿風化といって、濡れたり乾いたりを繰り返すうちに特に表面がボロボロになってくる。同じ理由で地下水が出てくると、同様に乾湿風化が起ります。それと、地震があると、このようなオーバーハングの崖というのは一遍に崩れます。ここに、こんな大きな岩が落ちてますが、別に誰かが運んだわけじゃなくて、上から落ちてきたということです。だから、こういう状態を見ると良くわかるように、今もって崖の侵食が進んでいるということが言えます。

それから崖の上のほうでは、くさび効果という木の根っこによる侵食があります。この崖は、もともと泥でできた柔らかい岩なので、根っこが生えていくことができるわけです。そしてそこの隙間に今度は地表面から雨水が入ってくる。そうすると、そこのところはますますもろくなるので、どんどん侵食が進む。

つまり、この場所では崖を波から守ったから大丈夫かというと、決してそうじゃないということがわかってもらえると思います。

 

でも崖を侵食から守るということは、コンクリートの護岸と消波ブロックでやれば、ある程度それなりにはできるんですが、日本ほど徹底的に守っている国は世界中にどこにも無くて、アメリカとかオーストラリアなど他の国に行くと、むしろ崩れ落ちるのは自然なことであるから放っておけ、という考えが主流です。その周りに人が住むのは、住みたかったらご勝手にどうぞ、ただし自己責任でお願いします、という考えなわけです。一方日本は、公共事業としてきっちり守ろうとします。日本の場合、侵食の危機にさらされている土地の所有者が公共事業で侵食対策してほしい、と陳情したにもかかわらず、工事が行なわれないまま侵食で土地が削られてしまった場合、裁判で負けるのは公共事業の担当者なわけです。ですから監督をしている人は、そういうことに非常に神経を使わざるを得なくなります。確かに日本は国土が狭くて人がたくさんいるという面もありますが、この外国との考え方の違いにはいささか考えさせられます。

 

清野 きょうは、主に海岸侵食という観点から、海岸を見ていきますが、単に国土が侵食されるというマイナスの一面だけでなくて、大陸棚に供給される土砂がどのように川や海岸の崖から出ていくのかということまで含めて、トータルで考えていきたいと思います。

 

オーバーハング

地形用語で崖面の上部が、下部よりも前方にせり出している形状をいう。

 

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海食崖の上に建つ家

(米国カリフォルニア州サンタバーバラ)

侵食が進む海食崖の上に建つこの家は、土台の杭がすでに露出し崩落寸前の状態にある。アメリカではこのような場合、海辺などの危険な場所に家を建てた個人の責任であって、行政や不動産業者には責任はないという考え方が主流である。コンクリート護岸で固めてしまう我が国とは大きな隔たりがある。

(写真 宇多高明氏)

 

 

 

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