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崩れ落ちる海食崖

海食崖を護岸が取り囲むようになった現在は、侵食による後退速度は大幅に低減したものの、風化や地震などによる崩落は今も進んでいる。

 

海食崖

波の荒い外洋に面した海岸線に多く見られる地形で、山や台地が波浪によって侵食され、海面から直接切り立った崖となった海岸地形のこと。

 

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消波ブロックのかさ上げ工事

激しい波浪が打ち寄せる太東崎では、消波ブロックの損傷や沈下が進みやすい。消波効果の低下を防ぐため、こうしたかさ上げ工事は不可欠なものとなっている。

 

しかし1m50cmぐらいの沈下というのは、非常に大きな台風が来て一度に沈下する場合もありますが、普通はジワジワと沈下していくんです。当たり前ですよね。でもそれでは災害ではないので、災害復旧として予算が取れない。その時に現場の担当者はどう考えるかというと、採択基準というものの中に「風速15mより強い風が吹いた時が災害を起こす条件である」となっているものですから、沈下が顕著になったら15mより強い風が吹くのを待っている。少々嫌みっぽい言い方ですが、現実はそうやって予算を取ってくるんですね。海岸を線で守っていくことには、そういう非常に厄介な問題があります。

 

この場所でも、海藻がついたり頭が欠けた古いブロックがありますが、それと比較してここに新しいブロックもあって、災害復旧として後から工事されたのがわかります。現に、200mくらい向こうに新しくブロックをかさ上げしている作業中のクレーンが見えます。

 

こうやって一生懸命侵食から守る一方で、崖の近くまで寄ると、今も崩れていることが良くわかると思います。この崖を海食崖と呼びます。崩れた岩が落ちてくるかもしれないので、あまり近づかないほうがいいと思うんですが、もともとは海の底に泥がたまって、それが100万年ぐらいかかってしっかりした岩になった。それが隆起して陸地になって、そして今、波の作用や別の要因でそれが崩れて再び海に戻ろうとしている。だから、サイクルというか、この辺の土地というのは、すべて海底で上がってきて、また海へ戻って行くんですね。

 

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泥岩と海浜植物

葉が厚く、保水力に優れている

 

 

 

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