多屋:例えば日本海の資源を4カ国で利用する。これはサバにしても1つの資源で回遊しているわけですね。そこで資源の持続的利用というのを旗印にして資源の取り合いをやっていくと、これは先取りした方が得で、自分のところへ入ってきたやつを全部とった方が得で、これでは資源の利用とはかけ離れたところになってしまいます。ですから資源の話だけでやると、各国のナショナリズムが絡んで最適な利用はできないんです。
非常に単純な話をすると、現在、例えば典型的な問題では、自分の国へ来た魚を小さいうちに獲ってしまうということですけれども、経済的に最適に利用するということであれば、その魚がほかの国に回遊して行ってしまっても大きくなってから獲れば、各国とも最大の利益が得られます。大きくなったところでその海域で、その国でとれるどこかの漁船団に割り振ってとれば一番儲かるというような計算をすれば、最大の利益が出てくるわけですね。これは資源のナショナリズムとかなりかけ離れたものになると考えております。
来生:早い話が、それぞれの国内の漁業政策とは別に、ある地域で最も合理的な最適配分を考えるというお話ですね。
多屋:そうですね。
寺島:よろしいでしょうか。
それでは石先生にご発言をお願いしたいと思います。
石:刺激的な議論を伺い、大変ためになりました。
多分、海の利用に軍事利用と商業利用と科学利用という3つの大きなカテゴリーがあるとすれば、日本は海運量を考えても、水産物の利用量を考えても、世界最大の商業利用国であることは言を待ちません。そして、長いこと日本は海に対する加害国という位置づけだった気がします。これは遠洋漁業から始まってさまざまな海洋汚染、特に最近は北太平洋の調査が進んできまして、カナダ、あるいはロシア、アラスカも含めてですが、日本から大量のゴミが黒潮に乗ってやってくるという非難の声が上がっています。
日本国内では余り聞かないですが、ブイを放流するなどで最近の調査をみますと、大量のものが日本から流れてくるわけです。ハワイ諸島の1つには海流の関係でごみの山が十数メートル、巨大な万里の長城のごとくあって、よく見れば日本製のラーメンの箱とか漁網とかがほとんどというようなことがありました。
ところが、その日本が何か最近は被害国になりかけてきて、北朝鮮の船が領海内に入ってきて逃げていったとか、中国の科学調査船が日本近海を調査するとかの事件がつづいて、やっとここに来て日本人も海に対する一方的な加害国から今度は被害意識を持ち始めたのではないかという気がしています。
その中で先ほど多屋先生がおっしゃったダイオキシンを1つ考えても、世界のダイオキシンの80%は日本産なんです。それは当然日本近海で落ちて魚介類に蓄積されるわけでありますから、私たちが体内にため込んでいるダイオキシン量は欧米人の10倍から100倍という量であります。