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先ほどの国土庁の取り組みも、今まで考えていなかった流域圏を対象にしてやるというようなところが非常に取り組みが進んできているように思いますし、いろんなところで徐々に動き出しているように思うんです。これが何か1つの大きな流れの方向にずうっと収れんしていくような、そして最終的には各自治体がその地域の問題として取り組んでいくような方向にいけば、非常にいいのではないかと思います。

冒頭のあいさつでもご紹介しましたフィリピンのバタンガスの例を見まして、IMOの事務所がいろいろ仕掛けているんですが、最終的にはその地域の人たちが自分たちで決めて計画をつくっていくというやり方で、やっぱり沿岸域の問題というのはローカルガバメントの役割が非常に大きいのではないかと感じておりましたので、ちょっと申し上げました。

 

寺島:それでは、私の方から1つ問題提起をさせていただけたらと思うんです。例えば海洋法条約で200海里の排他的経済水域を設定する、そういう制度をつくりまして、その排他的経済水域の中での天然資源などに対する権利を沿岸国に認め、同時に環境保護の管理義務を与えるということになっているわけです。その中で、具体的な話として、海洋の管理として人工島の設置とか利用、あるいはその管轄海域内での海洋の科学的調査、あるいは環境保護、そういった問題についての管轄権を加盟国にそれぞれ認めているわけです。例えば海洋の科学的調査はそれぞれの国なり国の研究機関が外国の排他的経済水域内で調査をしようと思えば、相手国に知らせて同意を求める、ただし、科学的調査であればそれに同意しなければならないということになっています。しかし、現実は必ずしもそういうことが簡単にいかなくて、調査を求めても返事が来ないとか、あるいは黙って入ってくるとか、いろいろあるわけです。中国との関係もそういうことで少々問題になっています。

私の感じでは、海洋調査という広い海の調査はとても1国だけでできないので、各国が協力して調査をどんどん進め、そのデータをお互い共有するのが望ましい。これは海洋法条約でもそういう精神がうたわれていると思います。そういう観点からすると、例えば今度は日本が同意を求められる立場になって相手国からそういう申請が来たときには、日本で同じような調査をしている部局か、日本ではどういう調査をしているかを把握している部局が申請を受け付けて、それで科学的調査をお互いに協力しながらやっていくという体制づくりが望ましいと思います。

これは科学的調査を一例にして申し上げていますが、200海里水域ができたことによる管轄権をどこで有効に行使するのかというのは結構大きな問題ではないかと思います。かつ、海洋法条約を批准するときには、その辺の手だてまではできていないまま批准しているのではないか、こんな感じがしているのですが、その辺について何かご出席の方々のご意見をいただければ思いますが、いかがでしょうか。

 

栗林:現実の日本の問題として、特に日中間の科学調査についての紛争の件は外務省の佐藤さんからお返事いただけると思いますけれども、この海洋法レジームの中では、アメリカが今あるレジームには反対したんですね。なぜ科学的知見の開発に制約などかけるのか、全人類のためになることではないか、なぜいちいち沿岸国の同意を求める必要があるのか、ということで猛反対したわけですが、結局は大陸棚とか経済水域を持っている国の同意、コンセントを得なければならないというレジームが成立したわけです。

 

 

 

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