日本に比べますと漁業というのはそれほど強くありません。沿岸におきましてはむしろ観光の方が盛んです。問題はかなり日本とフランスの間では違っていると思います。
寺島:国から漁業権を得るときにはレントを払っているというふうに伺いましたけれども。
エノック:ライセンスです。漁業許可権というのを取るわけです。漁業ライセンスを取ります。でも、それほど高いお金ではありません。
上嶋:私は海洋環境調査の関係から、漁業者の人と直接関わって仕事をしているものですから、その立場で彼らの気持ちを含めて今、漁業者が未来をどう考え、期待して生きていくのかについての現況を申し上げようと思います。漁村と漁業者を併せて考えると、例えば瀬戸内海における島嶼部での漁村の人たちは、かつては東シナ海まで遠洋漁業に行った人たちがおられ生活していましたが、今は後を継ぐ次世代の人たちがいなくて高齢化してそれは不可能になっています。従って、ほとんど漁村に居座らないと生活していけない状況にあったり、そのために、今までの獲る漁業から作る養殖漁業にどんどん変わっていってしまって、漁業権のある水域を1つの生産の場として確保しなければ生活していけないようになっしまった。ですから、この漁業権の権利を将来どのように考えるかが大きな課題です。1つの産業としてのスペースとして考えるのか、いわゆる古くからある1つの領域の権利として考えるのか、それをしっかりと整理し分けないといけないような気がいたします。そして漁業者は今かなり進化しています。若い漁業者たちは本当にいろんなことをやり始めています。そういうところをこれから未来に対してどのように生活も含めて考えていってあげるかが、かなりキーポイントじゃないかと思います。彼らは環境に対しての活動も始めています。どんどん進化はしているんですけれども、具体的な未来観や方向性ががまだ明確ではないということを常々おっしゃっております。一応参考になればと思いまして。以上ご確認よろしくお願いします。
清野:東京大学の清野です。
今の上嶋さんのお話にもあったように、日本では、漁場の保全と海洋保護区などのマリンレジャー、特にナチュラリスト系のレジャーの話が両立するという認識が非常に低いと思います。例えば海外で干潟の合意形成の会議を行なうと、さまざまな海岸の利害関係者が出席します。その際に行政、漁業者とも、環境保護団体あるいはNGOと呼ばれる人たちは漁業と対立する人、あるいは国の従来型の政策と対立する人であるというような認識を持つ場合がかなり多いです。これは、ここにお集まりの国レベルの行政の関係の方には、漁場保全と環境保全が両立するという認識が十分にありますし、また国際的な法律の中ではそういったものも日本の国としてはオーソライズしております。ところが、先ほどフランスの例でもご紹介いただきましたように、地方自治体のレベルでは、非常に日常的なコンフリクトを目の当たりにしているために、国家的な環境保全の方策と、個々の地方自治体が持っているような水産だとか農地だとか、あるいは航路だとか土砂管理といった非常に小さい単位での縦割りの人たちの中で環境保全の位置づけができていないので、その部分の調整能力が非常に弱いです。