日本財団 図書館


私は、漁業権をまったく無くそうという意味で問題だと言っているわけではないことがまず前提です。ただ、漁業権自体は、共同漁業権でいえば魚をとる権利であって、これを現在排他的に行っているわけですけれども、漁業権と空間利用との関係、これは法的には関係がないということがわかっていても、現実的には魚がいる海という空間と漁業をするという行為が一体的になっているというようなことから、現実には大変なコンフリクトが発生しています。簡単な例で言えば、漁業者とレクリエーション利用者とのコンフリクトが出てくるわけですが、こういう問題は、昔と比べて海の利用というものが極めて多様になってきたことから発生してきていると思います。海洋空間は漁業者の占有物であるという認識は一般の人には根付いており、やはりその部分で、1つには空間的なものがどうしても占有というイメージになってしまう。あるいは私にはそう考えている方もいらっしゃるような気がしていて、それが現実にコンフリクトという形であらわれたりするような状況になっているわけで、多様な利用が活発化されている現在、この辺りをもう一度考え直す必要があるのではないかというようなことで発言をさせていただきました。

 

来生:漁業権を消滅させるときの価格が高過ぎて開発がなかなか進まないということが、一般的には補償金額が非常に高くて、いろいろな意味で海のその他の利用をスムーズにいかなくさせているという指摘が一般的になされていると思うのです。それともう1つは、今おっしゃられたような特にレクリエーションで海を使うという時に、レクリエーションとの調整がうまくいかないという問題がある。この点もまた指摘されているところではありますが、前者の方、補償金額が高いから開発がうまく進まないという点は余り重要な問題ではないというご認識だと理解してよろしいのですか。

 

横内:いや、補償額が高額という部分もご指摘のとおりあると思います。これをどう考えるかということもあるかと思うんですが、話が少々細部まで入り込んでしまうかも知れませんが、例えば現在行われているような事前一括補償制度のような方式が多くとられていますが、この方式以外にも考えるべきと思っています。私は漁業補償自体は生活保障でもあり、当然の部分はあると思います。ただ、高額になってしまうシステムにも問題があり、簡単に言えば、漁業利用と他の利用とを適切にするシステムを考え上げることを前提に、漁業のみの排他的利用というものを緩めていく必要もあるのではないかと思います。

 

来生:私が直観的に思ったのは、漁業権を消滅させる際のさまざまなコストが非常に高いと一般的に言われていることに対して、社会が現在の状況を変えるためにどういうメカニズムを準備すべきかという問題と、それからレクリエーションとの調整をうまくやるためのメカニズムがどんなものであるべきかというのは、かなり性格が違うと思うんです。それを1つの問題として議論するよりは、異なるメカニズムを考えていく方が良いのかもしれないと認識をしておるものですから、それが先ほどの栗林先生の総合的な管理という視点と、どう結びつくのかということが気になったわけです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION