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そして、この保護活動、管理活動ですが、これを行っているのが地方の自治体、また地方の団体です。うまくいっているようです。

どういう問題があるかといいますと、今や余りにも多くの保護区域がこの沿岸地域に存在しているために、こうした保全関係の省庁がどういう形で管理に参加していくか、この取得した土地についてどういう形で新しい保護管理を行っていくかという方法が難しくなっています。まずは全面的に保護しようという動きが最初ありました、そして今では持続可能な開発は認めようという考えが出てきました。問題は、どうやってきちんとこうした取得された土地を管理していくか。単に保護するだけでなく利用も認めていこうというのが、今1つのこういった保全省にとっての問題となっています。こうして取得された地域に関して、どうやって保護と利用を図っていくかが重要です

 

寺島:日本大学の横内さんからは栗林さんに対する質問として、今後の沿岸域管理を考える際に極めて重要となるのが漁業権であると思うが、これからの漁業権のあり方に対しての考えがあればお聞きしたい、というご質問でございます。

 

栗林:漁業権についてはあまり詳しくありませんが、総合的な管理からすれば、やはりこれまでの日本の伝統的な漁業権のあり方というのは、各種の海洋利害を調整しながら1つの方向性を見出して行くことが必要なのではないか。今のような漁業権の形ですと、あらゆる海の利用に対して制約的要因となる部分がかなりあるのではないかという感じがいたします。これはもちろん沿岸漁民の方々の生活に関わることですから非常に大事な問題ではありますけれども、その点について、やはり先ほどのご質問のような総合的な法制を形成する中で取り上げていくべき問題だろうと思っています。

 

寺島:それでは次に、外務省の佐藤さんの方からのご質問ですが、国連海洋法条約のもとでの秩序づくりはこれから始まる旨発言されまして、私も同感なのですが、我々が直面する種々の海洋問題のうち、例えば海賊問題に対してより適切に対応するためには、海洋法をどのような方向で新たなルールづくりを行うべきとお考えでしょうか。栗林さんに対するご質問でございます。

 

栗林:非常に難しい問題だと思いますが、特に東南アジアあたりで、あるいは東中国海で行われているような海賊行為について、我が国もこれからいろいろ検討しなければならない点ということにつきましては先ほどお話ししたとおりなんですが、従来の国際法ですと、海賊という行為を取り上げてどの国の政府船舶でもこれを拿捕して自国法に従って処罰することができるというだけのルールでは、これは少し緻密な対応に欠けるルールだと思います。従いまして、ご承知のようにシージャック防止条約という形で、もっと海賊行為を含めた広い範囲でこの種の犯罪を抑制しようという条約ができましたけれども、日本はまだ批准していませんし、国内法制もまだ十分に整っておりません。この点について、やはり海賊ということを単に海上交通を妨害するものだという感覚だけではなくて、広く乗客の人命にかかわる問題としてとらえて、あるいはもう少し広く、そういう海上バイオレンス行為に遭ったときの被害船の行うそれ以後の行動、例えば乗っ取られて狭い海峡の中でよく操船技術もわからないような者たちが操縦して海洋環境を破壊するというようなことも考えられないことではないとする、そういう広い視野から、逆に言えば人権とか環境と同じような視点で海賊行為をとらえる、そういう網の広いかけ方というのがこれから必要ではなかろうかと思います。

 

 

 

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