その時に日本がいかに科学的な根拠を持って説得し、あるいは理解してもらうかという姿勢が必要なのではないかという感じがいたします。
寺島:ありがとうございました。
同じく上嶋さんからですが、エノックさんに沿岸域の問題で質問があります。それは2点ございまして、1つは、国際的な沿岸域の環境管理のための評価法の確立が必要と思いますが、どのように進めればいいのか、というのが1点。
それからフランスでは、ナショナル・トラスト的な環境管理機構があり、それは地方の自治体、市町村、そして科学者、一般市民、企業、それぞれの方たちが集まって環境の管理活動をされていると聞いておりますが、具体的にどのような利害関係を超えた活動がなされているのか教えてください、というこの2点でございます。よろしくお願いいたします。
エノック:まず1つ目の質問に関して、共通の評価基準ということに関しては、少なくともヨーロッパにおいてはどうなっているかといいますと、さまざまな地域、海域において、共通の活動を地域の国際的な条約のもとで展開しようという動きが見られます。例えばバルセロナ国際条約というものがあります。これは地中海地域に関する地域条約です。20の地中海地域沿岸諸国が一緒になって協力しようということは実に難しい作業でありますが、この国際条約は恐らく歴史的にも大変古いもので、1976年に策定したものだと思います。我々は他の分野でも共通の基準づくりに取り組んでいるところであり、まだまだ国内的取り組みの方が強いんですが、こうした共通の基準というのは、まだ水質に関しては存在していないというのが現状です。
でも、徐々にではありますが、状況は改善しています。恐らく北の方であれば、大西洋、北海地域など、こういったところの方が状況は良いと思います。恐らく1つには先進国がこの地域に多いということ、また十分練られた計画のもとで北海などでは活動が行われているということです。そして北海の水質全体に関して、これは単に地域的なものでなく、北海全体を対象にした水質管理という取り組みが行われています。これからそういう方向に向かっていくと思います。これで1つ目の質問に対するお答えになっているでしょうか。
2つ目なんですが、恐らくイギリスのナショナル・トラストのことをおっしゃっているんだと思います。フランスでも確かに、違う組織ではありますけれども、同じような目標を目指した機構があります。これはアクイジションと呼ばれております。土地取得、すなわち海岸地域の土地を取得するというものです。それによって自然景観を守ろう、あるいは自然の資産、遺産を沿岸地域において守っていこうというものです。これは沿岸地域及び湖沼沿岸地域保全省というのがありまして、そこで行なっています。いまこれが重要性を増しています。800キロメートルにも及ぶ海岸線が保護の対象となっています。つまりこの土地を取得してしまうことで保護を行おうというもので、その対象となっているのが800キロもあるわけです。