しかし、問題は何かといいますと、その解釈の問題です。つまりそれを見て本当に理解する能力、そしてデータをいかに日常の生活に取り込めるかということが課題です。それには随分時間がかかるかと思います。しかし、インターネットのおかげで、今やこのようなデータは簡単にアクセス可能となりました。
それから、水質全体に関しての質問ですが、まさに同じ状態になっています。先ほどもお話ししたように報告制度があって、この報告というのは欧州の環境庁からも一般向けに公表されています。ただ、一般の人たちの意識が必ずしも高くないとか、余り知りたがらないという問題はあるかもしれません。それが当面の問題でしょう。
第3点でありますけれども、市民参加ですが、先ほど申し上げましたように、確かに参加がよくなされていません。しかし、だからといって人々が参加する意欲がないというわけではありません。ただ、どうやって参加していいのかがわからないのが現状なのです。その点が問題です。たくさんの異なるイニシアチブが行政の方から出されておりまして、特に専門機関であるIFREMERや研究所などのいろいろなところから出ております。しかしNGOとの関係、あるいは一般の人との関係がまだ欠落しています。ですからまだ学ぶべきことは今後もたくさんあると思っています。
寺島:どうもありがとうございました。
続きまして、沿岸域の関係のご質問に入りたいと思いますが、中国工業技術研究所の上嶋さんから栗林先生へのご質問ですが、沿岸域の単位での法規制として沿岸域管理法がアメリカ、フランスその他で実施されていますが、日本での沿岸域法の可能性とイメージはどのようなものでしょうか。特に日本海の管理に対する国際関係が重要となります。今後の日本海のあり方について知りたいと思います、とのことです。
栗林:我が国の沿岸域というものは、やはり200海里を含めた形で理解しなければならないと思います。200海里から沿岸に近い部分での日本の国内法制というのは非常に細かく、ある意味では法制毎に細分化されている状況がございまして、トータルにそれに取り組むという観点がどうも少ない。その意味では、やはりそれを総合的に規制する、あるいは総合的な発展を図るような法制度が必要だと思いますけれども、恐らく太平洋側の方にとってみると、その200海里の問題も、高度回遊性魚種などの魚種によっては、日本とオーストラリア、ニュージーランドとのかかわり合いが出てくるような問題がございます。
ただ、日本海の側についてはどうかと言いますと、先ほど最後に述べさせていただきましたけれども、日本の場合にはどうも政治的にいろいろな複雑な状況がこれまでもございましたし、国によってまだ国交も無いような国との関係をどうするかという問題もございましたし、3つほど大きな領土問題を抱えた国際的環境の中でこの問題を図っていかなければならないという難しい状況があると思います。ただ、そういういわゆる国のボーダーによって非常に取り組みにくいような状況がある中で、共同の関心、共通の利益になるような課題については、いろいろ突破口があるのではないか。例えば、日本と旧ソ連との間にも、海洋における人命の安全ということが問題になったときには、そういう領域的なボーダーなど乗り越えた形でお互いに協力し合うというようなことができていますし、そういう共に利益となるんだという意識の醸成の中に、難しさというものを克服していく契機があると思いますので、現在、日本海における海洋環境の問題とか出てきていますけれども、それはそういった形での意識の高まりを期待するなり働きかけをしていくしかないのではないかと思うのです。