この取り組みを進めるためには、海洋生態系の観点からの環境保全目標の設定が必要ですが、この点に関するヨーロッパの状況につきご教示ください、とのことです。
以上の2点ですが、よろしくお願いします。
栗林:国連海洋法条約の批准ということもありますけれども、これからの日本と海とのかかわり合いということを考えた場合には、1つの方向性というものを国家がどのように持っているかということ、そしてそれに対して国民がどのようにそれをサポートし、あるいは批判し、その方向性を守っていくか、ということが大事だろうと思うのです。その意味では、必ずしも基本法という立法の形でないのかも知れませんが、そういう方向性を盛り込んで統一的な意思決定をしていくということは、海洋に限らず恐らく宇宙開発とか様々な分野でも日本は要請されていることが多いんだろうと思います。そろそろそういうことをやらなければならない。そのように感じているものですから、講演の一番最後に、縦割り的なものはここら辺で反省したらいいのではないかということを申し上げたわけであります。
22省庁が13省庁になっても、そこでファンクションすべき国家公務員の仕事というのはたくさんあるわけです。ただ、私は見ていますと、そういう縦割り的な枠組みの中で、本当にその能力、あるいは経験、そういうものが生かされないまま今日に来ているような感じがしてならないものですから、どのような事務局体制や行政機構をとっていくかということは別にいたしまして、ここはひとつ我々が考えなければならない点ではないかということでお話しさせていただきました。
寺島:これからの討論の中でも繰り返し出てくるテーマかと思います。この部分につきましてはとりあえずよろしいでしょうか。
それでは、エノックさんご回答お願いします。
エノック:ありがとうございます。できるだけ明確にご説明していきたいと思いますが、やはり簡単に答えは出ません。しかしデータ管理やモニタリングシステムに関して、いかにこの巨大な情報を扱っていくかということ、特に欧州レベルでそれをどうしたらいいかということも触れてみたいと思います。
最初に指摘があったように、欧州環境庁、これはコペンハーゲンにある組織ですが、そこでの仕事は報告活動、レポーティング活動であります。欧州のEU加盟国からさまざまなデータがそこに集まってきます。この欧州環境庁は数年前にできた新しい機関であります。報告作業はまだ始まったばかりでありまして、試行期間、トライアル期間と言えましょう。しかし既に、3年に1回ですが、今2回目の報告、第2シリーズの環境の質に関する報告が出ていまして、これは沿岸域に関してのみならず、ありとあらゆる種類の異なる自然環境に関する報告が行われてきております。
そこではテーマセンターといったものを決めています。1つのテーマセンターというのが沿岸域、海洋とかの質に関する部分で水質を扱っています。それから、第2の組織として情報源となる国際条約にかかわるものでありまして、例えばバルト海とか地中海といった地域の海域に関するどういう条約があるかという点について、各国際条約毎に締約国ができるだけ多くの情報を共有化しています。