DPSIRを用いまして富栄養化の問題を評価するわけです(P.64参照)。そして情報をまとめ、富栄養化について、その状況、環境への影響、プレッシャー、それに対する対応政策ということを環境及び政策という観点から策定することができます。
これは良いシステムだと考えています。確かに後で申し上げるような制約もありますが、しかし、情報のまとめ方としては優れています。というのも、これによって因果関係全体のサイクルというのが明らかになってくるからです。環境の状態と、それに対する様々な活動の管理を通じて出される政策が明らかになるわけです。例えば瀬戸内海であればCODつまり化学的酸素要求量といった簡単な指標を用いて効率的な評価をすることができます。
しかし、持続可能な開発ということを考えるとき、このシステムには制約があります。このシステムは因果関係というアプローチをとっているわけですが、持続可能な開発の原則ということに照らし合わせて考えるとき、私の知る限りではまだ沿岸域には適用されておりませんが、CIFORというインドネシアに拠点を持つ国際森林管理のためのセンターで行った例で、とても興味深い指標が出てきました。ここでは目標、原則というのを考える際には、効率に関しての指標を定め、公平性に関しても一例の指標を定め、持続可能性についてもまた別の指標があり、そして先ほど栗林先生もおしゃった予防的アプローチに関してもやはりまた別の一例の指標があります。そして次にどのような観点からという問いかけに関しては、生態系という観点、制度的観点、あるいは政策的な観点からこれを検討します。そしてどのような規模でということに関しては、国内、地方、あるいは地域・海域といったようなスケールで見ていくことができます。こうした指標を考慮することによって国連持続可能開発委員会の勧告にあるような有名な130の開発指標といったものを作成することができるわけです。しかし海洋沿岸域に関しては、まだそこまで行き着いておりません。
そこでもう一度、フランスの地中海沿岸地域の話に戻ってみたいと思います。水に関するマスタープランでは、沿岸域に関してそれぞれの地域の行動計画があり、地域単位に応じた計画が沿岸域全体にわたってそれぞれ設定されています。そこで、私どもの研究所がありますツーロン湾を例にとってみましょう。
簡単に申し上げますと、地域をこのように分けています(P.69参照)。左の方がスペインで右の方がイタリアです。これがツーロン湾のところを拡大したものです(P.71参照)。35万人の人口を擁している地域で、かなり都市化が進んでいます。このツーロン地域全体はオレンジ、赤色で表示されていて、これは都市化が進んでいることを示しています。そして自動車道路が沿岸に沿って走っています。
マスタープランをこのようなローカルな地域に適用するとしますと、ツーロン湾では14の自治体が、水質だけでなく、水質が依存しているさまざまな活動、生態系といった問題に取り組むことになります(P.73参照)。
ここで従来からの環境評価の手法をご紹介したいと思います。まずは事実関係を明らかにして診断を行い、目的を明らかにします。これが行動計画の第一歩になります。その上でさまざまな利用目的に応じた沿岸の水質を回復させることによって、自然遺産を守りつつ経済的開発を維持するというものです。この地域は、湾岸地域全体にわたって産業が発展している状況にあるため、これは重要です(P.75〜77参照)。