そうすればいつの日か、こういったモニタリングが環境の具体的な現状を把握することを可能にするでしょう。例えば沿岸地域での観測をもとにさらに流域へと上がっていき、そして汚染源、汚染物質はどこにあるのかということを突きとめていきます。つまりこういった下流域からスタートして汚染源へとたどるわけです。
このような地中海沿岸モニタリングネットワークにおいてまず必要なのは、まず沿岸域の水質データです。そして次にそれをどう解釈するかという問題あります(P.59参照)。データがあるということも1つ大事ですが、こうしたデータをどう解釈するかというのはまた別のことです。はっきり基準値が定められていなければなりません。つまりデータがあっても基準値がなければ、水質について良い悪いを論じることができません。
現在、我々は、この水質評価システムについて、沿岸域のそれぞれの利用形態に応じた、客観的な水質基準を定めたいと思っています。水質評価システムについて簡単に申し上げますと、基準値としてまず物理的・化学的特性に注目します。それから、この水の形態学的及び水文学的な特性に注目し、もちろん生物学的な環境、すなわち沿岸域における生物にとっての環境というものにも注目します。そしてこうした基準値を参照して、それぞれの沿岸域の利用形態に照らし合わせて注目していくということが重要です。そして将来的には、本当の意味での水質評価システムができて欲しいと考えています。こうした基準値を用いて指標の定量化を行っていきたいと考えています、
そうすると最終的には、ちょっと見づらい資料で申しわけないのですが、これはエリー湖というアメリカの五大湖の例でありますが、このようなものを作りたいと考えています。左側に指標、右側に評価があり、とても単純に書かれています。これは緑とかオレンジとか色分けしておりまして、一般市民が見ても、また政策決定者が見ても、今、水質がどういう状況にあるかが一目でわかるようになっています。将来において持続可能な開発が沿岸域において可能かどうかが一目で理解できるのです。
しかし、ここに到達するまでにはまだまだ課題が山積しています。これはOECDのDPSIR: Driving forces-Pressures-State-Impact-Response (indicator framework)というものですが、とても良く出来ていると考えています。ここには、推進要因、種々の活動・圧力、環境状況、生態系、それに対する影響・対応・政策、の因果関係が示されております。因果関係ということは、それぞれの基準がそれぞれ連鎖的な影響関係を持っています。例えば地球温暖化を例にとってみましょう。このようなアプローチを適用して評価を行うことができるわけです。例えば気候変動に関する指標を作成したいという場合はどうでしょうか。まず推進要因があります。これが何らかの情報となって、これがプレッシャーに結びつき、最終的にはこれに対する対応政策というのが出てきます。
また別の例ですが、これは土地の利用に関するものです。わかりづらいですが、やはり土地利用に関して推進力があって、そして最終的にはそれに対する対応政策に結びついていきます。
もう少し詳しくということであれば、これは日本にとっても重要視されている問題だと思いますが、富栄養化の問題があります。例えば瀬戸内海などでは重要な問題ではないでしょうか。