3. 新海洋法と日本の課題
国連海洋法条約の発効によりまして、日本が検討を迫られるようになった海洋法上の今日的な問題や課題というのは非常に多数あります。例えば、島の問題一つ取り上げてみましても、「経済生活」と「人間の居住性」という2つの基準を満たさない岩は200海里経済水域と大陸棚を周辺に設定し得ない、とする新しい規則が国連海洋法条約にありますけれども、こういう121条の規定に照らしてみますと、日本が沖ノ鳥島において2つの小さな岩の周辺をコンクリートで囲い込んで波浪からの浸食を防いでおるわけでありますが、それで周囲に200海里水域を設定しているということを法的に正当化できるかどうか、これも検討を要する問題の1つであります。
そのほか多くの問題がありますけれども、ここでは日本にとって2つの重要な海洋利害である海上交通と海洋資源につきまして、日本に当面するようになった幾つかの問題点を挙げてみたいというふうに思います。
今日、交通量の増大、あるいは危険物の船舶による積載など船舶交通の現状が変わってきている現状がある。それから、海洋利用が多様化してきているし、また海洋環境の保護、保全といったいろんな要因がある中で、無害通航権とか航行の自由という従来の通航権との調和を図りながら、海上交通にも管理的な発想の導入が必要とされてきております。幾つか挙げてみますと、まず日本の1977年の「領海法」は、これは後に96年に「領海及び接続水域に関する法律」に改正されましたけれども、これによって日本も接続水域というものを初めて設けるということになったわけですが、この77年の「領海法」は、領海を12海里に拡大すると同時に、先ほども言いましたように、宗谷海峡、津軽海峡、対馬東水道、対馬西水道、大隅海峡の5海峡を特定海域として、「当分の間」3海里に凍結して、そこに公海部分を残しておりますけれども、国連海洋法条約が発効した現在でも、「当分の間」の凍結は続いております。これらの海峡に領海12海里制を導入いたしますとい外国の核搭載艦の我が国領海内通航との問題が出てまいりまして、特に「核を持ち込ませず」という非核三原則との抵触が問題となる。この当分の間の凍結をどのように解除するべきなのかという問題が1つあります。
次に、これは寺島氏が先ほど開会の言葉の中でも述べておられましたが、国際海峡では船舶、航空機の通過通航権というものが承認されましたけれども、海峡の利用国と沿岸国が航行安全のための援助施設、汚染防止などに関して協力すべき義務が国連海洋法条約の中に新設されております。最近ではマラッカ・シンガポール海峡における航行援助の施設と業務について、海峡利用国側の費用負担を求める議論があります。日本は、この海峡の最大の利用国として真剣に検討すべき問題であります。
それから3番目に、日本のヨーロッパからのプルトニウム輸送や高レベル放射性廃棄物の輸送の予想航路となった沿岸諸国が、あかつき丸などの日本船舶の無害通航権や航行の自由を否定する動きを見せました。