日本財団は、過去30年間に灯台の設置等マラッカ海峡の安全のために100億円を拠出してきました。しかし最近、分離通行帯の延長、船舶通報制度の実施など海峡の安全を強化するための措置が進行しておりまして、沿岸国の費用負担が増大しております。このため沿岸国からは、利用国と沿岸国の協力をうたった国連海洋法条約43条を取り上げまして、利用国の協力を求める声が強く上がっております。マラッカ海峡は日本だけでなくアジアの生命線であり、万一事故等で使えなくなったときの影響の大きさを考えれば、この海峡で受益している利用国はその安全管理に協力すべきであると思います。しかし、今のところ日本以外の国からの拠出はなく、また日本からの協力も、その大半は私ども日本財団からのものです。
このフレームワークができましたのはもう20年ぐらい前のことでございまして、この二、三十年の間に、海峡の利用状況も国際的な海洋法の枠組みも大きく変わっております。この辺でこの問題をもう1度抜本的に検討し直してみる必要があるのではないでしょうか。利用国と沿岸国に呼びかけて、両者の協力のもと、国際海峡として重要なマラッカ・シンガポール海峡の安全を管理する新しい仕組みを構築するために、我が国がイニシアチブを発揮することの意義は大きいと思います。ご出席の皆様にもこの問題にご理解を賜り、構想実現にご協力を賜りたいと思います。
本日はこれから、慶應大学法学部長の栗林教授、フランス国立海洋研究所のエノックさんにご講演をいただきます。今後、海洋管理を考えていく上での重要な視点や知識が得られることと思います。その後、質疑と討論の時間を用意しておりますので、皆様の活発な意見交換を期待いたします。
本研究セミナーは今後も引き続いて開催していく予定でございます。皆様の研究や活動に活用していただきますようにお願いを申し上げまして、私のご挨拶といたします。ありがとうございました。