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1994年から99年の第1期計画で、中国のアモイ(Xiamen)やフィリピンのバタンガスの統合的沿岸管理、マラッカ海峡のリスクアセスメントなどを行い、一定の成果を上げました。これがGEF/UNDPや加盟国の評価と信頼を得た結果、2000年から第2期の5カ年計画を立ち上げまして、さらに活発に活動をしております。先日私どもは、この事務所を訪問し、さらにマニラから100キロちょっと離れたバタンガスのデモンストレーションサイトを視察してまいりましたが、ここでは地方自治体、この場合はバタンガス県が沿岸域と海洋の経済的開発と環境管理を統合的に行うプロセスとメカニズムを地元の自主性のもとにつくり上げることに成功しておりまして、地に足のついた取り組みを行っておりました、

海を舞台としたアジアの国々との協力は、グローバルな海洋管理の枠組みやルールが具体化されつつある今、大変重要であります。このプロジェクトはその点からも注目すべきものと思います。残念なことにわが国はこの取組みに参加しておりません。IMO地域事務所のチュア博士は、アジアの海洋先進国である日本のこのプロジェクトヘの参加を強く希望しておりまして、事務所のところにアジア11カ国の旗がみんなポールで立っているんですが、もう1本ポールがありまして、その旗のついていないポールを指さして、これは日本のためにとってあるんだと言っておりました。今まで日本に参加を働きかけたけれども、はっきりした返事がもらえないままであるとのことでした。我が国が不参加であるとこの具体的な経緯はわかりませんけれども、恐らく我が国の沿岸域や海洋の統合的管理の立ちおくれと、このプロジェクトにぴったり対応する行政の受け皿がなかったことが影響しているのではないかと思われます。どうか皆様には、このPEMSEAのようなプロジェクトが東アジアの海で進行中であるということをご認識いただきまして、できれば関係構築をご検討いただければ幸いです。

いずれにしましても、これに限らず、どうも我が国は、官民、行政、研究を問わず、ビジネスのことを除きましてはアジアに対する関心が薄く、交流が少ないように思われます、少なくとも海に関してはどうもそういう傾向があるのではないかと思われます。しかしながら、海のことは単に海だけの問題にはとどまりません。我が国が国際社会において重きをなし、安定と発展を確保していくためには海の問題は非常に重要であり、大きな影響力を持っております。特にアジアの海の問題についてアジア諸国と連携協力していくことはい今後心がけていくべき大変重要な課題だと思います。そういう意味で、アジアの沿岸域及び海洋に関する問題に、我が国は今後積極的に参加していくことを提案したいと思います。

話は変わりますけれども、私ども日本財団では、最近アジアの海で問題になっている海賊犯罪の撲滅に向けて取り組んでおりまして、その一環として東アジア地域の沿岸警備当局等の協力体制づくりを支援しております。日本の海上保安庁の積極的姿勢や、東アジア諸国の本問題への前向きな対応によりまして、アジア地域の沿岸警備当局間の協力のネットワークが形成されつつあることは喜ばしいことです。

さらに日本財団では、その延長上で、海上交通に極めて重要なマラッカ・シンガポール海峡の安全と海洋汚染防止のため、海峡の利用国と沿岸国が資金面を含めて協力するマラッカ海峡安全管理協力機構のような組織の設立を内外に提唱しております。

 

 

 

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