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地域海洋計画のトップバッターに選ばれたタスマニア、ビクトリアなどをカバーする南東地域の海洋計画について本格的な取り組みを開始しようとしているところでした。

また、そのときに聞いたのですが、オーストラリアでは、今年の7月に環境保護・生物多様性保全法、(Environment Protection and Biodiversity Conservation Act)という法律を施行しております。これは環境保護及びオーストラリアの豊かで貴重な生物多様性の保全を推進する法律です。この法律はいろいろな点で注目すべき点があろうかと思いますが、何しろ全体が600ページというふうな大部なものですので、詳細についてはまだ解明しておりません。けれども、特徴として挙げられておりますことを二、三申し上げます。

この法律は、環境保全のため能率的なアセスメントと承認プロセスを導入し、環境大臣に、承認に当たって、環境、経済、社会的な観点からの各ニーズを統合勘案して判断を下すように求めております。

また、生態的に持続可能な開発、Ecologically Sustainable Developmentという概念をつくりまして、このESDの原則に基づいて法律を施行するとしております。

さらに、オストラリアの生物多様性。ご承知のようにオーストラリアは南半球にありまして、生物多様性に非常にこだわっております。外来生物に対しても非常に厳しい見方をしております。この法律は、そういうオーストラリアの豊かでユニークな生物多様性保全のための統合的枠組みを提供しております。そして、オーストラリアの全排他的経済水域をクジラのサンクチュアリーとしている点など、多くの注目すべき内容を持っております。

オーストラリアは、先ほど申し上げましたように、世界でも一、二を争う広大な200海里水域を持っておりまして、その取り組みは我が国にも、漁業とか海運を初めさまざまな面で影響があると思います。例えばミナミマグロの問題とか、あるいは船舶のバラスト水の問題、―今アメリカやオーストラリアでバラスト水がいろんな生物を運んでくるということを非常に問題にしておりますが―そういったことについてもさまざまな影響が出てくると思いますので、今後とも注目をしていく必要があると思います。

このような海洋管理の取り組みは、オーストラリアあるいはアメリカだけの問題ではなくて、今世界のさまざまな国で行われております。中国では2000年に海洋環境保護法を制定しておりますし、韓国では1999年に沿岸域管理法を施行しております。

さらに眼を地域的な取り組みに転じてみますと、アジアの海でもさまざまな取り組みが進行しております。その中で今日はアジアの11カ国、すなわち韓国、北朝鮮、中国、ベトナム、フィリピン、タイ、カンボジア、マレーシア、シンガポール、インドネシアなど、日本以外の海に面する東アジアのほとんどの国が参加している東アジアの海のための環境管理のパートナーシップ、(PEMSEA: Partnership in Environmental Management for the Seas of East Asia)について紹介をしてみたいと思います。

このプロジェクトは、フィリピンのマニラにございますIMO(国際海事機関)の地域事務所がUNDP(国連開発計画)と協力をいたしまして、資金をGEF(Global Environment Facility地球環境基金)から受けて推進しているプロジェクトでございます。黄海から東シナ海、南シナ海、スールー海、インドネシアの海までのアジアの海について、沿岸域の統合的管理と小地域海(Sub-Regional Sea)の海洋汚染の管理を目指して実践的な活動を行っております。

 

 

 

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