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荏原:1点だけ、私の個人的な見解と、それに因んでボルゲーゼ先生に質問をお願いいたします。今、問題となっていたのは調整機関の存在があるかどうか、もしくは調整機関がうまく働くかどうかということでした。私の理解では、アメリカの場合ですと、先ほど海が人類の共通遺産であると指定されていましたけれども、たぶん海が共有財産であって、だからこそ全員が利用できますが、逆に言うと、これは不可逆的に利用できなくなる状況を避けるということだと思います。

その点で言いますと、アメリカの公共信託理論のように、裁判所が例えば人類共通の遺産であるから、もしくはコモンセンスであるからということを理由にして動いてきたように、日本と違ってアメリカの場合は裁判所の見解が一つの立場であったと思われます。

その点についてアメリカでは、人類共有財産である、もしくは公共財産である、ということについての国民的な合意があったのかどうか、その点をぜひお聞かせください。以上です。

 

寺島:講師のお二方で今の質問に対してご回答をよろしくお願いいたします。

 

イーラー:公式な記録の中で、ほとんどアメリカの人たちが海は人類共同の遺産だと思っているというような記録はないと思いますけれども、同じようなことを別の言語で言っています。法律がアメリカにはあるんですけれども、その法律によって、一定の機関、NOAAも含めて政府機関が天然資源に対する公的な信託を受けています。例えば、油濁法であるとか、スーパーファンドであるとか、そのほか有毒な汚染などについて、これは海洋においても淡水地域においてもですけれども、これらの法律によってNOAAが信託を受ける立場にあるわけです。ですから、これは全国民のためにNOAAが責任を果たすということになります。これは例えば障害が起こると、例えば海洋であるとか海洋資源に対してダメージが行なわれたときには、NOAAがどの程度までの損害があったかということを科学的な形で決定して、どれだけの資源が失われたということを、NOAAが責任を持って決定いたします。それによって経済的にどれだけのものが失われたかという、経済的な価値を付けるわけです。直接の市場価値だけではなく、非市場的な価値まではじき出します。これは非常に議論が分かれるところでありますけれども、なかなか効果的な形でうまくやっております。これを考えて、だれが責任を持っているかということを決定いたします。公的機関であるか民間機関であるかということを決定することができます。それはだれが責任を持つかということさえ同定することができれば、天然資源にダメージを出したときには、それの復元のための責任を取らせることができるわけです。そういうわけで沿岸または海洋資源というのは、これは公共財であるというふうに考えることができると思います。そして相当の金額を、数億ドルというお金をこれらの資源の復元のために集めることができました。それがお答えにはならないとは思いますけれども、アメリカではこういうやり方でうまくいっています。これは汚染者負担の原則を実際に運用している形と考えていただければいいでしょうね。これが実行されるのが、今説明したような形で行われているということです。

 

寺島:時間もだいぶ押してきましたので、今意思表示をされておりますお三方について発言を順次伺っていきたいと思います。

それでは、島さん、よろしくお願いいたします。

 

 

 

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