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ところが海洋の問題というのは、各省庁に跨るがゆえになんらかの意味での調整がいると思うのです。そうだとすれば、通常の意味での統合調整、大統領とか首相が行うというような意味での調整ではなくて、海洋問題に限って各部局の調整を行うという場合に、アメリカではどのようにとらえておられるのか、この辺についてお考えがあれば、あるいは問題点があれば教えていただきたいと思うのですが。

イーラー:既に強力な庁として省庁がいくつかあって、ときに利害が対立するということは日本でもアメリカでもあるわけであります。場合によってはいろいろ省庁間で対立があって問題解決ができない。職員とか、トップのレベルでも解決はできないという場合もあり得ます。そうしますと、政治の出番ということにアメリカではなります。大統領でなくても、大統領の麾下のスタッフがなんらかの形で政治的な基盤でもって問題解決に当たるというのが普通であります。こういう形で省庁間の対立は解消しているわけであります。こういった形で普通は予防するのがいいわけでありまして、そこまで行かないで、政治的なレベルまで行かないうちに省庁間でなんとか回避するというのが普通であります。調整、コーディネーションということになりますと、沿岸もあるし、海洋もあるし、いろんな分野が入ってきますし、アメリカでも、さらに閣議のレベルで四半期ごとに顔を合わせて、海洋、沿岸、主に海洋政策が中心なんですが、全体的に議論をして、全体的な省庁間の対立が出そうな分野はこうだから、こういうふうに対応しようということを討議する場があるわけなんです。そういった形で政策レベルの議論を行っております。

 

寺島:ボルゲーゼさんのほうからもご発言の意思がありましたら、お願いします。

 

ボルゲーゼ:2つ例をご紹介したいと思います。フランスとインドです。海洋省というのがうまくいっていないという例があるんです。インドではDODですね、海洋開発省というのがあるんですけれども、非常にうまくやっていたんですけれども、やはり部門別だけなんですね。極地の、南極とか、深海底のマイニングの問題だったら、うまくやっていたんですけれども、やはり統合的な取り組みというのはできないわけです。例えば、海運とか漁業ということになると、ほかの省庁にあるので、そういうほかの省庁が既に所管しているところとの統合というのはやはりできなかったわけなんです。フランスではもうあきらめてしまいました。つまり海洋省というのをもう廃止してしまったんです。ほかの省庁が自分の権限を分け与えるのはいやだというふうに言ったわけなんです。それぞれが海洋関係の省庁はいろいろほかにあったわけで、実はほぼすべての省庁がなんらかの形で海洋に関与している、そしてそれぞれ帝国をつくってしまっているわけなんですね。ですから、自分の芝生はほかの人に分けるのはいやだということだったんです。省庁間審議会あるいは協議会というようなものはオランダでうまくいっていると思います。

 

 

 

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