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今日の議題の「海洋管理」ということにつきましては、国連海洋法条約によって、国際法的には一応整理されたと考えております。御存知のとおり、条約は世界の海を「分割・共有」という概念も取り込みつつ、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚、公海、深海底などの海域に分けまして、機能的にも漁業や環境保全、科学的調査といった諸機能について国家の管轄権を明確にしたということでございます。ただ、伝統的な「海洋の自由」も当然残されておりまして、その「海洋の自由」と国家の諸管轄権を調整したということでございます。

このように包括的な海洋法秩序が、1958年の第一次国連海洋法会議から1982年の条約採択まで足かけ25年、つまりほぼ四半世紀もかけて構築されたという経緯、又、現在の国際社会の一般的な受容を考えますと、国連海洋法条約に基づく海洋法秩序というのは、今後数十年変わらないのでは、と考えています。

但し、国連海洋法条約が万能というわけではございません。正に、栗林先生も言われたように、色々政治的な妥協をしたということで、枠組みは一応できたのですが、実施の段階において必ずしも有効に対処できない問題が多々ありまして、我々も日頃から排他的経済水域及び大陸棚に関する、例えば中国、韓国、ロシア等隣国との間の境界画定とか、太平洋側にある我が国の大陸棚の限界画定とか、海賊及び不審船への対応とか、中国の海洋調査船が今日頻繁に東シナ海に出て来ておりますけれども、それへの対応とか、こういった様々な問題について、対応に困難が生じている場合もございます。

これらの問題を解決して、海洋管理というのを我が国が良く行っていくために、何をしなければならないかについて論じたいと思うんですけれども、その前に、本日の司会の寺島常務理事が昨年12月、朝日新聞の「論壇」に「海洋政策のない海洋日本」という記事を載せていらっしゃったことについて触れておきたいと思います。同記事では、諸外国は如何に総合的な海洋管理に積極的に取り組んでいるかという例を引かれながら、我が国の取り組みが如何に遅れているかということを痛快に斬っておられましたので、当時共感して読んでおりました。そこでは海洋管理を総合的に進めるために海洋主管官庁を設けるべきであると結論付けていらっしゃいました。そこでは韓国の例を寺島常務理事は引かれていましたけれども、その後、インドネシアまで海洋省を設置したと聞いております。

このように現在の体制を改革するという考え方に加え、私は、現在ある「海洋開発関係省庁連絡会議」という既存のシステムを強化するということも有用ではないかと考えております。

最後に申し上げたかったのは、我々事務方が今の時点でできることは、総合的な海洋管理の重要性を、一般の方々に対して訴えて、その理解と協力を得るための努力を行うことだと思うのです。正に、今日のセミナーでやっているような、地道な、またある時には大々的な広報努力というのを、シンポジウム、セミナー、イベントなどの形を通じて行っていくべきではないでしょうか。我々、外務省も、来年が我が国の国連海洋法条約締結5周年に当たりますで、その佳節に、海洋の開発・利用に関するシンポジウムなどを開催することを鋭意検討中でございます。その際には、日本財団始め本日御出席の省庁、諸団体の方々にも、御協力を仰げればと考えておりますので、宜しくお願いします。

 

 

 

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