日本財団 図書館


ボルゲーゼ:難しい質問をいただきましたね。確かにほとんどの大学のシステムはまだまだ古くて、分野的な、専門的な取り組みばっかり考えている。そして、もはやそのような形で解決できない問題に対しても分野別に解決をしています。やはり統合が必要だと、そして学際的なアプローチだとみんな口では言っているんですけれども、絵に描いた餅に終わっています。日本だけの問題じゃありませんよ、どこでもそうなんです。言うこととやっていることは全く違うわけです。ですから、新しいものを導入しなければいけないと思います。そうですね、それを国際レベルでやったほうが楽かもしれない、地域レベルでやったほうが楽かもしれません。新しいものを生み出すことができるからです。そうして何かの機関をつくって、その機関がこのような古い伝統に縛られないものをつくることができるんじゃないでしょうか。私たちはいわゆる仮想大学、バーチャル大学を海洋についてつくっています。これは学際的な仮想大学であり、この大学によって修士号が出されることになります。すなわち、海洋に関して学際的な研究を行って修士号を出すものであります。もちろんその中でも沿岸管理は大変大事な科目となっています。しかし、本当に変化をつくっていく、特に専門的な、分野的なアプローチを打破するためには随分時間がかかると思います。相当頑張らなければいけません。そしてたくさんの革新を導入していかなければできないと思いますけれども。

 

イーラー:私もコメントとしていいですか。アメリカ合衆国のことですけれども、先ほどアースデーが1970年に開かれたことを申しましたね。アースデーが行われたがゆえに大きな変化が起ったと思います。物の考え方について、また教育、環境に対応する専門家の教育についても考えが変わったと思います。その直接な結果として、多くの大学において、確かにボルゲーゼ先生がおっしゃったとおりだと思いますけれども、ほとんどの大学にある問題というのは、学者の間でもどうしても特化したい、狭い分野に特化したいという傾向があることは確かですけれども、環境に関する懸念によって多くのアメリカの大学は環境学科というのをつくるようになりました。そして科学のプログラムの中でも環境科学というのを導入しています。これもやはり学際的なものとなっています。これはアメリカで導入されてもう25年もたっていると思います。多くの大学のプログラム、非常に高度なものです。どうやってカリキュラムを生み出すか、学生に対して総合的な環境問題に対応させるかについても随分高度なものを持っています。沿岸管理は環境管理よりも十年間遅れていると思いますけれども、十年遅れているといっても、12ぐらいの大学がなんらかの形で沿岸管理を教えています。沿岸科学じゃないですよ、沿岸管理プログラムをあらゆるレベル、大学レベル、修士レベル、大学院レベル、博士過程でもそうです。デラウェア大学、ワシントン大学、サザンカリフォルニア大学、そのほかの地域の大学が沿岸管理に対する博士号のプログラムを持っています。これまで聞いたこともなかったと思います。10年、15年前までは考えてもなかったようなものでありました。しかし、これは今や現実となっています。これは沿岸管理の問題があるからです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION