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これは沿岸すべてというわけではないんですけれども、川の流域というのは当然海の沿岸も多少は入ってきますね。川の、河川流域の委員会、コミッションというのがありまして、そこでは量、質、両面で川の水を、その地域の水に関する量、それから水質に関する権限を与えられているわけなんです。そして一連の管理の活動を行います。例えば分析とかいろんな企画、実施、監視ということも入ってきます。さらに予算を集めるという、税収を通じて、予算確保の権限も与えられています。つまり、今言ったような管理ということだけではなくて、実際に設備投資、公共事業のようなプロジェクトもちゃんと予算的な権限を与えて、自分で必要に応じてやれるようにしているわけなんです。そういったリージョナル・アプローチの例があります。ただ、本当の意味では実行性があるのかということになりますと、やはりちょっと問題がありまして、もっと企画力だけではなくて、実際に実施する力、戦略を立てる力というのももっと付けなければいけないというふうに思っています。ありがとうございました。

 

寺島:ボルゲーゼさんのほうからもご発言の意思表示がありましたので、ボルゲーゼさんにお願いいたします。

 

ボルゲーゼ:ありがとうございます。これに関しまして、UNEPによる地域海プログラムというイニシアチブがあります。これを見ますと、非常にいい基盤があるんじゃないかと思います。地域的な制度の非常にいいベースになると思います。非常にいい例が70年代に始まった地域海に関するプログラムにありますけれども、やはりうまくいっていないところもたくさんあるんです。非常にうまくいかなかった、停滞してしまったんです。それは地域海プログラムがやはり分野別になってしまって、環境ということに絞ってしまった、汚染という問題に絞ったがゆえにうまくいかなかったという過去があります。今グローバルなレベルで陸上起源の汚染にどう対応するかという関心が高まっておりますけれども、その中で地域海プログラムが再活性化の途上にあります。これ、やはり非常に大事だと思います。というのは、これは地域的なレベルでの管理をするという、非常に有望な枠組みが既にありますので、これを生かしていくのは重要だと思います。

 

寺島:東京大学の清野先生から人材育成についての質問が出ておりましたので、清野先生、ちょっと簡単に人材育成のほうの部分の質問をお願いいたします。

 

清野:東京大学の清野です。日本ではきょうお話しいただいたような、海洋管理や沿岸域管理についての人材育成が大変遅れています。その理由としては海洋に関する学問領域の大半が理科系に限定されていることを、日本の研究者も教育者も当然のことと考えてきました。今これから人材をつくるときに、一つは、教育のシステムとしてアメリカでの例とかほかの国での例を学ぶということがあると思います。それについて教えてください。また、今からではもう間に合わない、要するに育つまで数十年かかるとしたら、今いる日本の沿岸の人々、それがNPOとかNGOとか、行政人とか、そのような人たちを沿岸管理のサイエンティフィックな、あるいはテクニカルなマネージメントに入ってもらうことが可能かと思います。この2点についてアドバイスがあれば、教えてください。

 

 

 

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