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寺島:それでは、次の質問をイーラーさんにお願いしたいと思います。これはお二人から似たような質問が出ていますので、一括して私のほうからご質問いたします。一つは、港湾空間高度化センターの小笹さんからですが、アメリカにおいても省庁間の政策を調整する機関は存在しないとのことであるが、NOAAの役割は何かというのが一つ。それからもう一つは、中原さんからですが、やはり米国においてさえ包括的な海洋政策を調整する省庁がないとのことであるが、どのような新しい省庁が必要であるとお考えですか。また、もし新しい省庁が必要であるとお考えですかという問いに対する答えがイエスであるとすると、現在のNOAAとの関係はどのようにイメージされますか。このお二人からの質問についての答えをお願いしたいと思います。

 

イーラー:質問はわかりました。質問はわかったけれども、答えが本当にあるでしょうか、ということのほうが気にかかります。さてNOAAの役割はいかにと聞いてくださいましたけれども、アメリカでは海洋機関としての仕事があります。そして一定の権限と調整のメカニズム持つということは、いろいろな省庁に対しての調整の役割を持っているわけです。しかし、我々としては押しつけることはできない、説得ですね。説得を主にやっているわけですけれども、NOAAというのは規制当局ではなくて、科学の機関であるということを覚えておいていただきたいと思います。そういうことから考えますと、科学機関としての大きな能力をもっています。情報を生み出し、情報を、例えば沿岸、海洋科学また社会科学についての研究を行い、これを合成していくという能力を持っています。そしてこのような情報は大変に価値があります。正しい政策を生み出すためにも、特にいろいろな資源の利用に対しても、そしてまた紛争解決のためにもこのような情報を出すことは大変意味のあることだと思っております。ときには、海洋自然保護区を我々は設定しているわけですけれども、NOAAが100%、それの管理のための責任を持っていることもあります。それに関する資源とか、紛争こ関する責任を持っていることもありますし、またNOAAとしては非常にある意味では自分だけでできるという強力な機関でもあります。しかしながら、環境保護庁に対しての権限もないし、内務省とか沿岸警備隊に対して権限を持っているわけではありません。そのときには権限がないのですから、問題解決のためには説得を続けるわけです。ほとんどの場合は説得でうまく行きます。全部が全部そうとは言いませんけれども。

もう一つ、アメリカにおいて理解していただきたいことがあるのですけれども、沿岸の問題が解決されるとすれば、州政府が相当責任を持っているということです。米国レベルでなくて、州レベルで解決が行われるということであります。一つ、大きな情報として、我々の沿岸域管理法の中に、フェデェラル・インシスティンシーというのがあります。すなわち、国の沿岸管理プログラムに対して州政府が相当関与することができる。そしてまた連邦政府からお金をもらって、それを実行することができます。ですから、フェデェラル・インシスティシーじゃなく、フェデェラル・コンシスタンシー、成功性プロジェクトのもとで連邦が何か行動を取った場合に、そしてそれが自分たちの沿岸に対して影響があり得る場合には、これに対して州は非常に強い、法律的な権利を持っているということであります。何かあれば疑義を入れることができる。そしてまた産業とか、そのほかの汚染者に対して、自分の沿岸管理の中で許可を与えることができます。

 

 

 

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