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ですから、市場の原理というのはやはり機能しない分野があるんだと、まさにこの分野がそう言えるんではないかと思います。

それからまたトレイダーリィ・ミッションですね、譲渡可能な排出権の問題ですけれども、これもやはり同じことが言える思います。つまりこれは本当におかしいと思うんですね。排出というのはそもそも減らさなければいけないはずのものです。これは排出しなくていいという抜け道を捜すための手段ではないはずなんです。ですから、考え方が逆転してしまっているんではないかというふうに思います。これでお答えになっているかどうかわかりませんが、私はこういう意見を持っております。ありがとうございました。

 

寺島:とりあえずよろしいでしょうか。

 

多屋:それに関連いたしまして、ニュージーランド、オーストラリア、カナダというところでITQを導入して、それなりに今成功しているわけです。こういった国はそれなりの成功の条件があったのではないかと思います。つまりニュージーランドは沿岸漁民がいたとか、それが元々いなかった、貧困の問題が特になくて、200カイリ体制の中で、棚ぼたで200カイリ資源が自国に入ってきてしまったというような。それはだれも使っていない200カイリ資源が入ってきたので、外国に使わせるということでITQシステムを導入していって、特に問題がないだろうというのではないかと思っています。独占の問題も、これは各国とも独占禁止法というのをつくって、ITQの何%以上を持てば禁止だということで解決しています。ある一定の条件さえ整えば、市場原理も場合によっては使えるのではないかと思っております。カナダのITQにしても、ITQはどこの国でも賛成する人に聞けば賛成ですし、反対する人に聞けば全く反対だという性格のもので、カナダの国会議員の人に聞くと、カナダのITQ制度は大成功だったというふうに言っていたわけですけれども、ボルゲーゼ先生の今までの、前文でお聞きした情報の中ではオーストラリア、カナダ、ニュージーランドの実態というのはどう見ておられるでしょうか、質問は以上です。

 

ボルゲーゼ:今おっしゃいましたけれども、それほど成功しているとは思いません。いろいろな漁民からの意見を聞いてみますと、とてもアンハッピィですよ、ITQについて。彼らはいろいろなものを失っていると、多くの漁民が仕事を辞めなければならない、村を追われてしまったり、そしてまた魚を捨ててほかの仕事を探さなければならなかったと。小規模漁業が随分苦しんでいるということです。そして漁民が仕事を見つけようと思ってもなかなか楽ではないんです。この3国プラス、アイスランドに関しては非常に強い反対の意見をITQに対して聞いております。また厳しい批判もITQに対してあります。地域社会においても漁業の管理はするべきだと思うけれども、ITQシステムはよくないと言っている人がたくさんいます。これは大企業よりのものではないですか、また仲介業者に利するものがITQじゃないでしょうか。

 

 

 

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