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宗教的な援助に関して私どもが配慮しておりますのは、差別をしないということと、ご自分自身がもっていらっしゃる宗教をこちらが否定することはしないのが原則でございます。ですから、患者さんによっては、病室に小さな仏壇を持ってきたいという方もいらっしゃいますし、新興宗教の何か飾りが入ってくるということもございます。そういう場合には、ご希望があれば新興宗教の教祖様が病室を訪れることはあります。ただ、その方にお願いしておりますのは、不特定多数のまわりの患者さんのところにはお邪魔しないでいただきたいということは言っております。

仏教に関しては、今まで亡くなる前に、ぜひお坊さんを呼んでいただきたいと言った方は1名ですね。今まで約2000名の方が利用なさっていますが、1名。その方はご自身が得度していらっしゃる方でして、亡くなる前に何回か尼さんに来ていただいてお話をしていただいたという状況でございます。

大下 はい。皆さんもおわかりいただいたと思いますけれども、坊さんを死の間際に呼ぶということは皆さんのなかにどんなふうに感じていらっしゃるでしょうかね。縁起が悪いというふうに思っていらっしゃる方、多いんでしょうかね。

じつは私は飛騨ではよく呼んでいただけます。最近はしょっちゅう「来てください」と電話がかかってきます。情報としてそういう坊さんがいるということがわかってないということがあったりしますが、一回行きだして、「よかったよ」という、そういうことがつながっていくと、「ああ、坊さんもいいんだ」という話になりましてですね。これからもこちらの静岡のほうでもそんなこと、広めていただきたいなと思っておりますけれども(笑)。ちょっと冗談が過ぎましたかね。

水野さんのところでは、そういう宗教というものに対してのケアについてはどんなふうにやってらっしゃいますでしょうかね。

南 はい、水野さん、ちょうどよろしいので、何か補足発言もありましたら、それも含めてお答えいただけますか。

水野 千原先生と同じで、宗教に制約は何もありません。どんな宗教であれ認められています。ただ、母体がキリスト教主義の病院ですので、入院される方は、「ここへ入るとクリスチャンにならなければいけないですか」という方もあるんですが、まったく自由ですね。いろんな方がいらっしゃいますけれども、仏教徒の方で、枕経の前に臨終行儀というのをやってほしいということで、大急ぎで西本願寺のお坊さまに来ていただいて、間に合ったということがありました。たいへんご遺族が喜ばれました。西本願寺でも初めてのことだったそうです、なかなか病院というところに衣を着たお坊さまが出入りできないんですね。ましてホスピスというところは死をみつめてはいますけれども、実際そういった衣を着たお坊さまが行き来しているというシーンはないんですね。それで奥様に、「明日お別れのようですね」というお話をしてました。そしたらハッとした顔をされて、「大変だわ、お経をあげてもらわなきゃ」とおっしゃって、同時に私も席をパッと立ちましてね、奥様が電話をしにいかれて、間に合ったんですね。

あとは牧師様が週1回来てくださってまして、傾聴です。これは信仰云々ということよりも、ラウンジに待機しておられまして、たまたまそこに来られた方がお話しされるとか、あるいはクリスチャンの方の入院で来てほしいという場合は病室まで行っておられますが、これも強要するものはありません。

 

 

 

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