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では、今、皆様方のお話が一応ひと回りいたしましたので、ちょっとほかの先生のお話をうかがっていて思いだしたとか、ちょっとこれだけは言い添えておきたいというようなことがおありでしたら、それぞれ2、3分でもう一度お願いいたします。

大下さん、何かいかがですか。

大下 日本の場合に非常に家族ケアというものがだいじだということを最近感じています。

患者さん本人に対してのかかわりもだいじなんだけれども、じつはそれといっしょに悩んでいる、苦しんでいる、あるいは戸惑っている家族というものも、同時に存在しているということなんですね。そういう方に対して今の医療現場というのはほとんどケアされていない。もちろんホスピスなんかでは非常にそういった部分に配慮されているところが多いんですけれども、一般の医療施設はまだまだそういうところまでいかないということで、私たちはなるべく患者さんだけではなくて、家族のお話を聞くという場も一つの試みとして思っています。

今まで本業が坊さんですと、亡くなってから行くというケースが多いわけなんですけども、最近だんだん末期の方とかかわって、そのままお葬式して、いわゆるグリーフワークといいますが、悲嘆の癒しということまでをやってみて、これはやっぱりだいじな部分だなというのを感じています。これからは医療の場面で考えていかなければいけないのかなというようなことを思っています。

一つ質問していいでしょうかね。千原先生に聞きたいことは、先ほどイエス様の聖書のなかからのお話をいただいたんですけれども、実際に聖隷のほうで入院される方のなかで、キリスト者が何%ぐらいなんでしょうか。キリスト教の方に対しては宗教的なケア、キリスト教的なケアというのができるんでしょうけども、一般のそうではない仏教徒であるとか、そうでない人たちに対して、たぶん「あそこへ行くとキリスト教の教育をされるんじゃないか」と思っている人がいるかもしれませんので、実際にその場面でどんなことをされているのか、そのへんを少しお話しいただきたいのですが。

南 ありがとうございました。それではちょうど質問が出ましたところで、千原先生に補足発言も踏まえて、よろしくお願いします。

千原 お聞きいただいてありがとうございます。よく誤解されている問題ですので、正確にお答えしておきたいと思うんですが、聖隷ホスピスに入院なさる患者さんの約9%がキリスト教の方なんですね。日本全体では1%の方がキリスト教の方ですから、その率からいうと聖隷ホスピスに入っていらっしゃるキリスト教の方は多いということがいえます。そして、宗教調査をしてみますと、約35%の方が「仏教」というふうにお答えになっています。あと、正確な数字は覚えておりませんけども、おそらく仏教、神道というふうな申告をなさっている方は、家の仏教、あるいは家の神道というかたちの方が多いのではないかなと思います。

キリスト教の方に、特別のケアをしているかというと、私どもはそうは考えておりません。すべての方に同じケアを宗教的な意味でもさせていただきたいというふうに思っております。ただ、病院そのものがキリスト教をバックボーンにしておりますので、朝の15分間の礼拝はやっております。礼拝に出てくる方は非常に少ないんですけれども、病室でその礼拝をお聞きになっている方はかなりの数にのぼっております。

 

 

 

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