日本財団 図書館


そして、競艇場というところに来たのは初めてなんですね。前から一度行きたいなと思っていたんです。私、競艇は見たことないんですけれども、一人の競艇選手のファンなんです。関さんという競艇選手がおられまして、ちょっとケガをされて私の病棟に入院されたことがあります。それで深いかかわりをもってケアをさせていただいたので、前から関さんの働いておられた競艇場を見たいなと思ってましたので、今日はとてもうれしいです。その仲間の選手の方やご家族の方もたくさん会場におられると聞いてます。いっしょにこのセミナーを聞いていただきたいと思います。

私の働いている愛知国際病院のホスピスは市民活動から、どうしてもホスピスがほしいということで、5万人の署名を集めてくださった愛知ホスピス研究会の皆様とか、いろんな市民団体の方々が募金活動もしてくださって、去年の4月にオープンしました。それで今、1年半経とうとしているんですが、たくさんの人との出会い、別れがありました。だいたい「ホスピスってどんなとこだろう。どういう人が入院できるのだろう」とわからない方もたくさんいらっしゃるんですが、今日はある患者さんが手紙をしたためられまして、そのご両親がチラシの裏に書かれたお手紙をもって、ホスピス外来に相談にみえたことがありましたので、そのお手紙を紹介させていただきたいと思います。

 

「このようなチラシで、たいへん失礼、お許しください。

ただ今クリニックに入院しており、43歳の女性。大腸癌、卵巣癌、肺癌と手術をしてまいりました。数回の抗癌剤治療をし、大学病院の先生も、『治療は終わった』と宣告を受けています。

心の準備は自分でできていたつもりですが、数回の腸閉塞を繰り返し、そして今回はただ痛みをコントロールした時間がとても寂しく、耐えられません。少しでも同じ病気を語られる方のいるなかで、あと残された命、しあわせだったと思いたいのです。

どうぞ私をお救いください。今は体力的にも、行ってお話しできないのが残念ですが、切に希望いたします。よろしくお願いいたします。

乱筆、乱文、お許しください。」

 

96年に大腸癌の手術。97年に卵巣癌の手術。2ヶ月後に肺癌の手術。そのあと、ホスピスに入院されまして、98年、ホスピスを準備している段階の病棟で、3週間ほどのご入院で亡くなっておられます。中学生と高校生のお子さん、それから年老いたご両親を残していかれたのですが、そういう方々がホスピスに来られるわけです。先ほども個室料がかなり数万ということを言われておりましたが、ホスピス病棟の半分は無料個室を置きなさいというふうに法で決まっております。医療費は、高額療養費支給制度というのが適応されますから、最終的に6万3600円を越えた分は医療費は返ってきます。けっして敷居の高いところではなくて、皆さんの癌の闘病のあとに、もうこれでゆっくりしたいと、残った時間を大切に過ごしたいという時期が来たときに、どなたも訪ねていただけたらというふうに思って、このセミナーに参加しております。

今日はよろしくお願いします。

南 ありがとうございました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION