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2年間考えて、いよいよオープニングを最近やったわけですが、浜松地方の方々も、ぜひ75歳以上でも何かやってやろうと思う人は私の提唱する会に加入して下さい。男性でも女性でも、新しい出発をするのだ、日々新たになると思うことは、皆さんをものすごくリフレッシュする。

そういう意味で、どうか皆さんが「死」を学びながらも、今日の日を充実して生きるということに全力を投入していただきたいと私は願うわけであります。

『葉っぱのフレディ』にはこういう会話があります、兄貴のダニエルがおくてのフレディに教えるのですね、「生まれたときは同じ色でも、葉っぱのいる場所が違えばなに一つ同じことはない、色も変わる、形も変わる。だから紅葉するときはみんな別々の色に変わってしまう。秋になって、枝にしがみつく葉もあるし、あっさり離れる葉っぱもある」と。フレディは枝から離れる葉っぱの運命を聞いて、「それは死ぬということでしょ」と兄貴に聞く。「ぼくは死ぬのが怖いよ」とフレディが言った。兄貴分のダニエルは答えた、「まだ経験したことがないことは、恐いと思うものだ。でも、世界は変化しつづけているんだ。変化しないものはひとつもないのだよ。死ぬというのも変わることの一つなんだよ。変化をするというのは自然なことだ」。それをフレディは聞いて少し安心しました。ダニエルの葉は散り、次いでフレディの葉も散って、そして冬の日の雪の上に葉は落ちていく。地面に落ちたフレディは枝にとまっているときにはわからなかったけど、自分が落ちてその木を見上げるとたくましい木の全体の姿が見えた。「これならこの木はいつまででも生きつづける木にちがいない」と思いました。そうしてフレディは雪の上で目をとじ、眠りに入りました。フレディは知らなかったのですが、冬が終わると春がきて、雪は溶け、水になり、枯葉のフレディは土に溶け込んで、木を育てる力になるのです。命は、土や根や木の中の目には見えないところに新しい葉っぱを生み出そうと準備をする。命は循環する。この絵本を書いたバスカーリアという人は禅宗や仏教のことも勉強した人で、輪廻の思想がキリスト教の信仰とまざり合って述べられているわけです。

大自然の設計図は寸分の狂いもなく命を変化させつづけている。この大宇宙の設計図、狂いもなく星も太陽も、規則のままに、そして私たちもその規則の中で姿を変えていく。どのように変わるかは私たちの自主的な努力とチャンスによってそれは違ってくる。そしてすべての人にそのようなチャンスはある。こういうふうにみなさんは思っていただきたいと思います。

私は、いろんな人から教えをたくさん受けましたが、東洋で最初のノーベル文学賞をもらったのは、インドのタゴールという詩人です。タゴールは絵がじょうずだったし、音楽、作曲をしますし、詩をつくり、そして小説を書き、そして哲学者であり、宗教家であった。ダ・ヴィンチのような人ですね。彼が80歳で亡くなるつい1、2ヶ月前に書いた詩に自分で曲をつけました。そのタゴールの詩を読んで私の今日の「死をおぼえる」という講演を終わりたいと思います。

「こんどのわたしの誕生日に、わたしはいよいよ逝くだろう。わたしは身近に友らを求める――彼らの手のやさしい感触のうちに、わたしは人生最上の恵みをたずさえて行こう。今日、わたしの頭陀袋は空っぽだ――与えるべきすべてをわたしは与えつくした。その返礼にもしなにがしかのものが――いくらかの愛といくらかの赦しが得られるなら、わたしはそれらのものをたずさえて行こう。終焉の無言の祝祭へと渡し舟を漕ぎ出すときに」(出典:?)

平生から死のこと、生のことを考えていれば、私たちの最後をこのようにもっていくことは可能であると思うのです。

 

 

 

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