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8年前に出してから、ほかの病院では黙って帰られる患者さんが、「書いてあることとやることが違う」と言って、たいへん怒られるわけでありますが(笑)、簡単に申し上げますと、医療や福祉を利用される方は、長い間の上から押さえつけるようなケアのやり方、まかせれば治るとか、「わしにまかせれば大丈夫だ」とか、そういうようなパターナリズムといいますけれども、昔の親父さんのような態度でサービスを受けてまいりましたから、利用を受ける方のほうが萎縮していらっしゃるんですね。「こんなことをお医者さんや看護婦に言うとあとで何か意地悪をされるのではないか」。福祉施設でも、「本当はあの寮母さん、大嫌いなんだ。おむつ交換のたびにお尻をつねっていくんでやめさしてほしいんだけれども」と、話が生々しくてすいませんが(笑)、「そんなことを言ったらここにいられなくなってしまう」という人質意識というんでしょうか、そういうのがあるわけです。「だからこの人たちには何を言っても無駄なんだ」というふうに医療人の多くが思ってきたのではないかと思います。なんのことはない自分で行なってきたことが返ってきただけ。ブーメラン効果というものでありまして、投げたものが戻ってきたわけであります。私は今は医療や福祉というサービスを提供する側が「あなた方はこういうことをもっと言ってもいいんですよ」という時代なのかなと思ってやってまいりました。

医療職の役割を支えるという点では、ホスピスで働いている方、ドクターやナース、その他の専門職種だけに苦労を負わせるのではなくて、病院全体がホスピスをどう支えていくのか、そのホスピスケアのなかのいちばん大事なところを病院のなかにどう広げていくのかというそういうものがないと、大きな病院のなかでの一部のホスピスというのは難しくなるのではないかなというふうに思います。

幸い、院内でのトラブル、やっかみとか、ホスピスだけいい思いをしているというのはなく、20年近く、私どもは運営してまいりましたので、それはもしかすると病院全体の課題として受け止めてきたからなのかなというふうに思っております。

先ほど、デーケン先生が、「人間は、考える、自由に選択する、それから愛するという特徴がある」とおっしゃいましたが、もしかすると私どもの「患者の権利宣言」と同じようなことを言って指摘していただいのかなと思って、今日はうれしく思っております。

松島 田島さんに最後のまとめをしていただいように思います。これからの向かっていく道をなにか探せたように思います。

もう少しお話を続けたいところなのですが、少し時間がもう迫ってまいりましたので、これで終了にもっていきたいと思います。本当は最後に一言ずつご意見をいただきたかったのですが、これで終了にいたします。

本日は、皆様と共に最後までここに残っていただいて、いっしょの時間をもつことによって、お一人お一人にとって死とは何なのか、そして今日を生きるということの意味について、何か皆様の一つでも感じ、考える機会となったならばたいへん幸いです。

4人のパネリストの方々、ありがとうございました。そして、皆様、ご参加いただき、ありがとうございました。パネルディスカッションはこれで終了にさせていただきます。ありがとうございました。

 

司会 ありがとうございました。「『死』をみつめ、『今』を生きる」をテーマにお送りいたしましたパネルディスカッションはこれにて終了とさせていただきます。

貴重なご意見をお聞かせいただきましたパネリスト並びにコーディネーターの皆さんに今一度、大きな拍手をお願いいたします。皆さん、どうもありがとうございました。

 

 

 

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