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患者さんを亡くすという悲嘆の経験に対するストレスと、ご家族に対する対応もそこには含まれますけれども、チーム間がうまくいくように看護婦さんやほかの職種の皆さんがストレスをためないようにというためのケアがいちばん大きな働きになります。たくさんの人の前ではしゃべれないというふうな内容のことは、一人ずつアポイントを取って来てくださいということになりますけれども、スタッフの皆さんの心の健康状態というのはきわめてホスピスでは大事です。一般病棟でもチームを組んでいるはずなんですけれども、ホスピスではそのチームワークの絆がいいように言えば強い。自分たちの意見を交換する場所が多いんですね。ホスピスでは一人ひとりの考え方がわりと浮き彫りにされまして、そのときに合わない職員というのがはっきりしてくるわけです。そのときに「この人とはもうやっていけない」なんていうふうなことが起こってくることがありまして、とかく私はその間にはさまれているわけであります。

松島 ありがとうございました。

田島さんは、ある意味ではそういったチームを支える側でありますけれども、多くはなかなかチームも組めないという現状のなかで、これからの医療や福祉はどんなふうに進んでいったらいいのか、看護学生さんのご質問のなかにも、今後の医療、福祉のあり方について知りたいというご意見もありましたが、そんなことで今日のいろんな発言を聞きながら、何か一言。

田島 すごいのが来てしまいましたが(笑)、私どもも施設ホスピスを開設して19年、聖隷ホスピスというのをやってまいりました。これだけで何も病院が変わったわけではありません。756床という大きな病院のなかの27床をホスピスでやってまいりましたので、このたった27が残りの730ぐらいの全体の病院を大きく変えた原動力というか、きっかけになったと思います。私もはじめのころ、外から来たお客さんを案内すると、「ホスピスではこういう医療をやっています」という説明をする自分に気がつくわけでありますが、「待てよ」と、「ほかの自分のとこの病院はやっていないのか」ということで非常に言葉に慎重になった思いがあります。ホスピスでお一人お一人を大切にする医療ができて、なぜ全体でできないのかというところに医療に携わる者の悩みがあるわけですね。

私は現場の仕事ではありませんでしたので、どういう医療を病院がやっていくのかということを、この10年ぐらいずっと病院長といっしょに考えてきたわけでございます。今日、ご紹介すると時間がなくなりますので、ぜひインターネットが使える方は「聖隷三方原病院」というふうに検索エンジンでみていただきますと、ホームページが出てまいります。そこに「患者の権利宣言」というものを私ども制定しております。8年前から、玄関の前に畳一畳ぐらいの大きな紙、入院患者さんお一人お一人にも配りますし、ナースステーションにも貼ってございます。早口でいいますと、「お医者さんを選ぶ権利が患者さんにはあります。真実を知る権利もあります。秘密を守られる権利があります。尊厳のある生を全うする権利があります。差別されないで平等な治療を受ける権利があります。医療費の明細や医療費の公的な援助についての情報を知る権利があります」という6項目でございます。

 

 

 

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