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チームの問題、これはとても難しい問題です。患者さまの状態について、あるいはご家族の状態について、ある程度お話を伝えないとボランティアがどのような援助をすることが必要なのか、あるいはどのような援助をしてはいけないのかということがわかりません。私たちのホスピスの場合は、ボランティアは基本的には、患者さまのお世話をする。つまりコミュニケーションの相手をするというところに主眼を置いております。そういう点から考えますと、個人情報である患者さまの病状について、どの程度まで開示をすることによってボランティアを医療のチームの一員として迎えていくことができるかというところが、私たちのいちばん大きな問題となっております。少しずつボランティアの人たちにも学んでいただき、私たちも成長していって可能なところから情報をいっしょにケアしていく、そして患者さんのお手伝いをしていくということだと思います。

ボランティアの役割はやはりコミュニケーションの一つの大きな潤滑油であり、社会の風だと思います。

松島 はい、ありがとうございました。お話をうかがいながら、いろんな職種の人が、そしてボランティアもこのように活動ができたらたいへんすばらしいなあというふうに思います。

そういうふうにいっしょに仕事をするということは、すばらしい出会いがあると同時に、またいろいろなストレスもあるかもしれません。死を前にした患者さんのいろいろな思い、そしてご家族の悩みに接する、そしてチームとしてもうまく機能していくというところデイケアをする側もたいへん疲れてしまうのでケアをしてほしいというふうに思うこともよくあるかと思います。

沼野さんはスタッフをサポートするお仕事をされているようですが、そのへん、少しお話しくださいますか。

沼野 今の2つのホスピスに出勤いたしまして、お昼ご飯は看護婦さんと一緒に毎日食事をするようにしています。私自身の病院からの期待のなかに、職員が燃え尽きてほしくないという事実がありまして、燃え尽き症候群にならないために心のケアをしてくださいということなんです。食事を共にしますときには、個人的に分かち合うというのではなくてもかまわないような内容が出てきます。ホスピス病棟から職員がやめたいという気持ちになる理由は、講演会場なんかでも質問が出ますけれども、そう次々と亡くなっていく職場でお仕事をされていたらさぞかしお疲れでしょうと。それが原因になっておやめになることがあるんですか、というふうな質問をいただきます。ところが、現場の者はそうではないということを知っているわけでありまして、患者さんが次々に亡くなるからホスピス病棟で燃え尽きたという話はあまり聞いたことがないわけです。いちばん問題なのはチームがうまくいっているかという問題です。つまりチーム間、ドクター、ナースのチームとか、ナース同士のチームとか、このチームがうまくいかない場合に「私はここを去りたい」という意味合いをこめて退職をする人はたくさんいるわけであります。

 

 

 

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