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最後に心の絆を結ぶユーモアについて考えましょう。私は、新しい死の文化を創り出すにはどうしてもユーモアが必要だと思います。最近は日本の社会全体が真面目すぎるように感じられます。私は、いつもジョークとユーモアを区別します。ジョークは頭のレベルの技術ですが、ユーモアは心と心の触れ合いから生まれます。相手に対する思いやり、これがユーモアの原点です。人間同士の愛の表現といってもいいでしょう。

私はドイツでの子ども時代、「人間は笑うことのできる唯一の生物だ」と聞いたときに、私の飼っているネコが笑うことができるかどうか、一つの実験をしました。そのころ私は12匹のネコを飼っていました。我輩は猫が好きでした。私は12匹のネコを全部並べて、その前でいろんな変な顔や格好をしたんですが、1匹も笑ってくれませんでした。私はそのとき「ああ、人間は笑うことができる。何とすばらしい能力をいただいたことだろう」と神に感謝しました。私は数年前に四国のある大学の医学部で講義しました。そこでこのネコの実例をあげましたら、一人の学生が手を挙げて、「先生、私のネコは笑うことができます」と言ったんです。やっぱり四国のネコは大したもんですね(笑)。イヌやネコは全身でいろんな感情を表現しますが、人間の顔の表情の豊かさとは比べようがありませんね。人間は顔の表情だけで「アイ・ラブ・ユー」と伝えることができます。ですから、私は、ホスピスや病院の中でもスタッフ自身の健康を保つためにも、患者や家族への思いやりの表現としても、ユーモア感覚をもっと磨くことが望ましいと考えています。

ご清聴、ありがとうございました。

 

司会 デーケンさん、ありがとうございました。

それではここでラ・ソチエタ・ヴィヴァルディ合奏団によります弦楽四重奏の記念演奏をお送りします。

ラ・ソチエタ・ヴィヴァルディ合奏団は、香川県在住の管弦楽奏者がバロック音楽を研究、演奏するために結成された研究団体です。1975年の創立当初よりチェロ奏者であり、指揮者でもいらっしゃる小笠原洋三氏を音楽監督にお迎えし、活動を続けていらっしゃいます。その演奏水準の高さには定評があり、現在までに国内外の著名な音楽家を独奏者として招聘し、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハなど、後期バロックの作曲家を中心とした演奏活動を行なわれています。また、ホールでの演奏以外にも、教会、サロンなど、さまざまな会場で演奏活動を行なわれており、現在はヨーロッパ公演を計画中でいらっしゃいます。

それではご紹介いたします。第一バイオリンは武村寿子さん。第二バイオリンは藤野妙子さん。ヴィオラは坂昭男さん。チェロは藤川美枝さんです。

演奏していただく曲は、モーツァルト作曲ディベルティメント・ニ長調・ケッフェル136です。

それではよろしくお願いいたします。

 

司会 ラ・ソチエタ・ヴィヴァルディ合奏団の皆様によります記念演奏でした。

ありがとうございました。

それではただ今より20分の休憩に移らせていただきます。パネルディスカッションの開始は2時55分を予定しております。

 

 

 

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