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さて、ホスピスという言葉はその源は巡礼者をお世話した宿にあるといわれます。それならば、ここ四国の地はお遍路さんを心をこめて温かく世話をしてこられた伝統の地であります。ある作家にいわせますと、「日本の魂の救済の地だ」とさえいっております。もとより人生観、宗教観、あるいは死生観は人により違いますけれども、このようなご当地におきましては、本日のテーマはより深いところで受けとめていただけるのではないかと期待しております。

また、私どもが掲げましたmemento mori という言葉は、歴史上いろいろな使われ方をしてきております。私どもすぐ思い浮かべるのは、しゃれこうべにmemento mori と書いた絵、西洋の中世における絵だろうと思います。私たちのポスターをご覧いただいたと思いますけれども、骸骨ならず、大地に踏ん張る大樹にこのmemento mori という言葉を書いております。いま、この言葉にどのような意味をあたえられるのか、本日の先生方とともにお考えいただければと思います。

みなさま方にとって、これからの時間が有意義なものとなりますようにお祈りいたしまして主催者の挨拶といたします(拍手)。

 

司会 主催者を代表いたしまして、日本財団常務理事西澤辰夫よりご挨拶を申し上げました。それではここで、本日のプログラムを簡単にご案内いたします。

このあとは「人生に有終の美を――生き方の選択――」と題しまして、聖路加国際病院理事長でいらっしゃいます日野原重明さんにご講演をいただきます。続きまして、「新しい死の文化を考える」と題しまして、上智大学文学部教授でいらっしゃいますアルフォンス・デーケンさんにご講演をいただきます。そのあとは、ラ・ソチエタ・ヴィヴァルディ合奏団によります弦楽四重奏と、休憩をはさみまして、かとう内科並木通り病院院長加藤恒夫さん、奈良ニッセイエデンの園総園長田島誠一さん、六甲病院緩和ケア病棟チャプレン沼野尚美さん、淀川キリスト教病院ホスピス係長和田栄子さんをパネリストに、ピースハウス・ホスピス教育研究所部長松島たつ子さんをコーディネーターにお迎えして、「『死』を見つめ、『今』を生きる」をテーマに、パネルディカッションを行ってまいります。

では、さっそく最初の講演をお願いいたします。

ご講演は聖路加国際病院理事長、日野原重明さんにお願いたします。

日野原さんは1941年、東京の聖路加国際病院に勤務されて以来、医者にまかせきりにしない患者参加の医療を持論にご活躍されております。1973年、「生涯を通じて健康に」を掲げたライフ・プランニング・センターを創設し、その理事長を。また笹川医学医療研究財団理事長、聖路加看護大学学長を歴任され、現在は聖路加国際病院理事長、聖路加看護学園理事長を務められております。1993年には、ライフ・プランニング・センターの付属施設として、神奈川県平塚市にピースハウスホスピスを開設され、88歳の年齢にもかかわらず、スケジュールが許すかぎり泊り込んで終末期患者の診察にあたっておられます。

 

 

 

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