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ですから、ごく大それたことではないですけども、やはり人を騙した人はつらい最後を迎えるのではないかなというふうな気がします。

それからもう一つは、亡くなっていくといいますか、痛みとか何かがあって入院してこられて、痛みをきちっとコントロールする、そうすると癌の患者さんはわりとぎりぎりまで肉体的QOLが保たれています。で、最後にかかる症状の一つが退屈という症状が出てまいります。自己表現する方法をもたない方は、退屈してしまいます。ですから、音楽でもいいですし、短歌でもいいですし、絵を書くでもいいですし、やはり、自己表現するといいますか、そういう芸術的な趣味といいますか、そういうのをもつということはやはり何か起こったときに、自分の退屈を癒してくれるし、やはり生きていくうえですごく大きな助けになるのではないかと思います。

 

永石 ありがとうございました。

デーケン先生、ずっと先生はこの準備教育ということを言われているわけですけども、改めていかがでございますでしょうか。

 

デーケン 今、3人の方もよくおっしゃいました、今の問題点、たとえば癌告知の難かしさとか、なかなか言えないとか、そういうことの一つの原因はやっぱり患者さん、あるいは家族はその前にずっと死をタブー化しましたから、生と死に対する教育がなかったからそういう医者と末期患者のコミュニケーションが難かしいんじゃないかと思います。

ですから、私が提案したいのは、もう小さいときから、少なくとも中学から高等学校から死への準備教育を生かしたらどうか。たとえば今、慶應高等学校はもう一年生から死への準備教育が必修科目になっています。そして、上智大学では今、定期的に中学校と高等学校の先生方に集まっていただいて、それは「東京生と死を考える会」のなかの一つの研究会ですね、やっぱり死への準備教育研究会は、それはぜんぶ先生方に発表していただいて、どういうふうに教えているかとか。ですから、理想的にちゃんとドイツのように、さっきも言いました、20冊の教科書もできましたが、それはいちばんいいと思いますけども、それはすぐにできないと思います。ですから、私が今すぐできることで提案したいのは、年に一回は、各中学校と高等学校で、生と死を考える日をつくって、そのなかでその一日は、たとえば医者と看護婦、ホスピススタッフも呼んで、そこで次の五つのテーマを取り扱ったらどうか。

一つは、やはり死への準備教育、たとえば具体的に、「あなたのおとうさん、おかあさんが入院したとき、あなたはそのときに何ができるか」とか、あるいは第二のテーマとして、喪失体験と悲嘆教育ね。私たちの人生は喪失体験の連続ですから、その後でどう生きるか、とくに死別体験の後どう生きるか。

 

 

 

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