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遠藤 一般病棟とホスピス、よく、普通の病院で、その病院の先にホスピス病棟をおつくりになる方がありますね。で、ホスピス病棟ができることはたいへんけっこうなことなんですけども、こっちの病院でもって非人間的な治療しかできない人が廊下を渡っていってホスピス病棟に入っていったらホスピス的なハートフルな治療ができるというのはとてもおかしい感じがしますね。ホスピスでできることは一般病棟でも本来できるわけなんです。ですから、お二人がおっしゃったほんとに黙って患者さんと二人で月を見てるという、それはたいへん医療者にとっては重い時間だと思いますね。だけど、そういうことを一般病棟ではほとんど望めないですね。看護婦さんもお医者さまもたいへん忙しくて、ベッドサイドへ来てくださるということが、まずないし、いらっしゃれば、ほとんど病人の顔とか目の色とか、そういうことぜんぜん関係なく、「どうですか? あ、データ、けっこうですね。血圧もけっこうですね。あ、それではさよなら」て、皆さん、同じようですね。それで「あ、今日はすごく目の色がいいですよ」とか、「手の力が今日はすごいですね」とか、「今日は空がとても青いから、きっと今日は快適にすごせますよ」とかっていう個人的なことをおっしゃってくださる方はないですね。

ですから、そういうことで患者というのはわりあい敏感ですから、この人はマニュアルじゃなくて自分に接してくれてるってわかるんですね。そこからやっぱり勇気をいただけるんだと思うけども、「ああ、データけっこうでございますね。それではさようなら」じゃしょうがないんですね。ですから、そういうところがどうしてホスピス病棟でできることがこっちの病棟ではできないのかなという感じはいたします。

 

永石 ちょっと医療関係に偏ってきましたのでちょっと話題を変えたいと思いますけども、我々は、さっきから話していますように、病気だけではなくて、突然の事故なんかでも死を迎えるということがあるわけですけども、そうしたさまざまな死に対して、日頃から何か準備ができるのか、また何を準備すればいいのか、さらに私も子どもが二人いますけども、自分の子どもに何か伝えることはあるのか、その問題に移りたいと思います。

遠藤さんは著書のなかで、「青年時代は肉体の季節。中年は心と知性の季節。そして往年は魂の季節である」と、50歳から死の準備をすべきであるという、その必要性を説かれていますけども、この準備教育ということについて、遠藤さん、どのようにお考えになっていますか。

 

 

 

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