日本財団 図書館


それから、最後の1週間ぐらいは医者は何もしないというか、安らかな方向にということで、まだ医者の多くは、患者さんにとって何もしない勇気というのを持ってないような気がします。まじめであればあるほど患者さんのために何かをしたい。何かをしたいということが医療行為というふうに錯覚しているドクターもけっこういるんじゃないかと思います。何もしないということも患者さんに何かをしているんだと。そばにいて「どうですか」と笑顔を見せることも大きな医療だということを、やっぱりもう少し教育すべきではないかと思います。

感性というのは、じゃあターミナルのドクターやナース、どういう人が適していますかとよく聞かれるんですけども、「それは普通の常識があることだ」と、私は答えております。たとえば、主婦で看護婦さんがいたときに、そのご主人と同年輩の人が亡くなっていく。そのときに普通の主婦としてその患者さんにふと考える、もちろん医療のプロとしての考えをもちながら、そういう普通の主婦としての考えを半分もって見ていくという、決して大それたことではなくて、普通の意識をもつということがだいじだと思います。

それから、英語では1期、2期というステージ、最後のステージをファイナルステージというふうにいいますけども、ステージというのは非常に私はデーケン先生と違いまして英語があまり得意ではありませんので、よくステージの意味がわかりませんけれども、私、寺山修司の弟子で、天井桟敷に所属しておりまして、舞台にかかわっておりまして、ステージというのは舞台という意味があるんじゃないかと思うんですね。で、ファイナルステージというのは、最後の舞台、今、遠藤さんがおっしゃいましたように、最後の舞台を演じる役者を医者がきちっと演じさせるといいますか、そういうこともディレクター的な意識も非常にだいじではないかというふうに思いました。

 

永石 今、遠藤さんのほうからも出ましたけども、私どもが医療の知識の不足から、おまかせ医療というかたちでぜんぶ医師側に投げかけてきたといいますか、まかせてきたということもあると思うんですけども、そのあたりはドクターという立場から、逆に患者側に要望するものというようなものはございますか。

 

堂園 私は、勉強してくださいと、患者さんやご家族に言います。勉強すればするほど選択の幅が増えると思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION