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ですから、もし皆さんも日野原先生のように元気で長生きしたいなら、ボランティア活動はその一つの具体的な道になります。私も毎年、上智大学の公開学習センターで、半年間のホスピス・ボランティア養成講座を開きます。140人の定員がすぐいっぱいになります。これはも定年退職後の生きがいの探求につながる生き方の一つではないでしょうか。

もう一つ、豊かな第三の人生を過ごすためには、思い煩うことからの解放が必要ですね。年をとるとともにだいたい私たちはますます思い煩うようになります。私はいろんな老人ホームで研究しましたが、朝から晩まで思い煩うことが道楽のようになっている人がいるんですね。明日は雨が降るか降らないか、今日思い煩うなんてばかみたいですね。降れば降る、降らなければ降らない。なんで1日前からそれを考え込む必要があるんでしょうか。私もまあ、今朝、雲が多かったので、今日は大雨になるかなってちょっと思い煩ったんですが、誰も来ないと困りますからね……(笑)。いつも私は自分でできることは一所懸命やりたいんですが、自分でコントロールできないことについては一切心配しません心配しても、誰にもコントロールできないでしょう。天気についての私のスローガンは「晴れてもアーメン、雨でもハレルヤ」です。

次は、人間というものは自分なりの生を全うするのと同じように自分なりの死を全うしなければならないということです。死ぬというのはただ受身的なプロセスだけじゃないんですね。自分なりの生を全うするのと同じように自分なりの死を全うするためには、次の六つの課題について考えましょう。死ぬ前にやるべき課題です。

第一は手放す心。執着を断つということです。私は何百人もの患者の死を看取りましたが、いちばん悲しかったのはニューヨークのある男の人のケースでした。彼は死の2時間前にも、「今、銀行の私の口座にドルがどれぐらいあるか調べてください」と私に聞いたんですね。私は正直なところ、「天国ではドルは通用しませんよ」と彼に言いたかったんですが、もちろん言いませんでした。いつまでも財産に執着してももっていけませんね。ですから、中年期からは少しずつ手離す心を学ぶが必要です。

第二は、ゆるしと和解。心のケアの大切さです。昔から日本では文化は和の文化を重んじます。日本人は生涯和を重視する国民ですから、人と和解いしたり許したりして内的な不調和を解消しておかないと、素直に死を迎えられない人が多いのです。人を許せるのは自分が弱いからではなくて、真の強さの証です。他者を許せない人は終わりのない憎しみと恨みの悪循環に支配されます。

 

 

 

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