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53]溶接板骨構造物の内構材からのき裂の外板板厚貫通条件

安藤清、杉村忠士(三菱重工)

溶接板骨構造物の板厚貫通に至るメカニズム解明のために、ロンジ構造モデル疲労試験を実施した。ブラケットとフェースとの隅肉溶接部から自然に疲労き裂を発生させ、フェース、ウェブを破断した後、外板隅肉溶接部に沿ってき裂伝播する例及びそのまま外板を板厚貫通する例を実験的に初めて再現した。これを説明できるき裂の外板板厚貫通条件を最大接線応力説をべースに導出し、検証した。特に、せん断応力比Fτ(=τxy'0x'0)だけでなく、交差部へのき裂進入角度β、垂直応力比Fsy(=σy'0x'0)を考慮できる汎用性の高いものとした。

 

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外板板厚貫通条件

 

54]疲労き裂伝播の微視的メカニズムの解明に関する研究 ―銅単結晶材における疲労き裂伝播挙動―

吉成仁志(東大)、粟飯原周二(新日鐵)、若原強、岩上寛(東大)

銅の単結晶材を供試した疲労試験ならびにSEMによる破面観察を実施した。その結果、単結晶材では結晶固有の活動すべり系を選択的に伝播していくことを、広範囲の結晶方位・き裂関係について確認した。また、結晶方位によって、き裂伝播速度と初期き裂からの逸脱の様相が大きく異なることが判明した。

 

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銅単結晶材の疲労き裂伝播速度

 

55]分子動力学による銅単結晶材の破壊挙動解析

吉成仁志、真橋洋平(東大)

銅単結晶材に固有のすべり系を中心に、き裂先端近傍の破壊挙動について検討を加えた。金属結晶体を原子集合体としてモデル化し、分子動力学(MD)法を用いて、2種類の結晶配向についてき裂先端に現われる原子構造の変化を調べ、破壊挙動のシミュレーションを行なった。その結果、単結晶材では結晶構造固有の活動すべり系をすべることが3次元的に確認でき、MD法の有効性が確認された。また、擬似疲労シミュレーションも行ない、非可逆的挙動、すなわち、き裂先端に微視的損傷が蓄積していく挙動を再現できることができた。

 

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すべり系の計算結果

 

56]結晶弾塑性有限要素法を用いた疲労き裂形成機構に関する研究(その3)

大沢直樹、冨田康光、橋本聖史、山鹿伸幸、山田礼子(阪大)

疲労過程中の繰返し硬化の主要因がforest転位で生じた点障害と考えて、転位密度増大と荷重反転を考慮したすべり系硬化特性を定式化した。その硬化特性を結晶弾塑性有限要素法に組込み、繰返し変形挙動を解析する手法を開発した。開発した手法を用いて面心立方繰返し応力歪応答を解析し、実験結果と比較してその有効性を検討した。

 

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すべり系の計算結果

 

 

 

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