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29]セミサブ型長大浮体の波の散乱問題に関する考察

坪郷尚(大阪府大)

本研究では、“trapped mode”とよばれる、縦波中に固定された剛体列の間の水面変位や各剛体に作用する波力がある特定の周波数で大きくなる現象について、断片的に知られている事実を統合し、現象の解明を試みた。浅水域におけるセミサブ型長大浮体を想定した、浅水域で水面上に固定された1列の剛体板群による縦波の散乱問題、に限定して考察を行い、trapped mode発生の周波数、modeの数、モード形状を推定する。この極限的なモデルで得られた結果は、必ずしも他の一般的な場合にも成り立つとはいえないが、今後のtrapped mode現象の研究には役立つものと考えている。

 

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30]津波作用下の浮体式海洋構造物の応答に関する研究―津波中浮体の運動応答並びに係留索張力応答―

増田光一(日大)、宮街?日大)、大澤弘敬(海洋科学技術センター)

本研究では構造物の初期設計を念頭に置いた実用的な津波波力と運動応答の算定法の開発を目的とする。津波波形を孤立波で置換する方法を提案し、実際の浮体式海洋構造物を想定し、応答の推定を行い、その有用性を明らかにした。また、波浪を対象とした場合の計算結果と係留索張力によって比較を行い、津波荷重の及ぼす影響について考察した。津波作用時は、異常波浪時を上回る場合があり、浮体の設計において重要な検討項目となることが確認された。

 

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係留索張力最大値の比較

 

31]東京湾の海洋物理環境のリアルタイムシミュレーションに関する研究

藤野正隆(東大)、多部田茂(東大)、北澤大輔(東大)、金井大(大成建設)

水温や塩分濃度等の海洋物理環境の数値シミュレーション精度を向上させるために、なるべく現実に近い境界条件を用いた計算(リアルタイムシミュレーション)を行い、観測結果と直接的に比較・検討したところ、水温変動を定量的にほぼ再現することができた。また、境界条件を変化させた計算を行うことによって、境界条件を正確に設定することが重要であることを示した。

 

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東京湾内追浜沖の水温の観測結果(上)とリアルタイムシミュレーション結果(下)

 

32]湾外域の海況変動を考慮した内湾の流動・密度場の数値計算

多部田茂(東大)、河合剛充(DNV)

外洋の物理場の影響を強く受けている熱塩フロントの変動や黒潮系暖水波及のような現象を数値計算で調べるために、計算の対象海域を湾外域に拡大して湾外の海況が湾内の現象に与える影響について検討した。まず単純な形状のモデル湾で、熱塩フロントや暖水波及の計算を行い、外洋域の海況を考慮することによって内湾域の計算結果がどのように影響を受けるかを調べた。また実海域において湾外域の海況を衛星リモートセンシングデータを用いて与えた数値計算を行った。

 

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計算領域と衛星データによる海表面水温分布

 

 

 

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