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17]転覆した船に働く流体力とその曳航法に関する研究

湯川和浩、星野邦弘、原正一、山川賢次(船研)

航行不能な船を曳航する場合、曳船・被曳船の針路安定性が重要な問題となるが、シミュレーション計算で精度良く評価するためには、曳船・被曳船に働く流体力を正確に把握する必要がある。しかし、被曳船が転覆船である場合、転覆した船に働く流体力に関する研究例は極めて少ない。本論文では、転覆してトリムやヒールを伴なう船に働く流体力を計測し、その特徴を調べた。また、得られた流体力の計測結果を用いてシミュレーション計算を行ない、被曳船の針路安定性やふれまわり運動について検討を行なった。

 

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転覆船を曳航する場合の針路安定判別(船尾Trim & 右舷Heel 6 deg.)

 

18]定常斜航船体まわりの粘性流場に与える自由表面影響(英文)

田原裕介(大阪府大)

本研究では、レイノルズ平均ナビエ・ストークス方程式法を定常斜航船体まわりの粘性自由表面流場解析に適用し、造波影響が平均速度・圧力場、縦力・横力・モーメントに及ぼす影響を調査した。計算の妥当性を示すために、レイノルズ数・フルード数・航走状態が同一の実験値と計算結果との詳細な比較を行った。その結果、特に高フルード数で斜航する船体に関しては、流体力の予測において造波影響の考慮が重要であるという結論を得た。

 

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Comparison of force and moment distributions.

 

19]肥大船の形状影響係数の簡易推定

笠原良和(ジャパンテクノメイト)

船体形状と直接に結びついた形状影響係数の推定法を提案する。二重模型流れの計算、三次元境界層計算などの解析理論計算から得られる流場を数個の流場パラメータとしてまとめる。これらのパラメータと水槽試験結果とを最小AIC法を用いて統計解析を行い、回帰式を作成した。肥大船における満載、バラスト状態における適用例から、設計の場で使用できる精度をもつことを確認した。

 

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満載状態の形状影響係数の推定結果

 

20]非構造格子による自由表面流計算のための界面捕獲法(英文)

日野孝則(船研)

非構造格子を用いて自由表面流れを計算するために、level set関数を用いた界面捕獲(Interface Capturing)法を開発した。水と空気の界面は界面からの距離であるlevel set関数の移流方程式を解くことで追跡する。また、空気の領域に対して、水中のセルから流れ変数を外挿する手法により、水の部分だけを解くことが可能になった。水中翼まわりおよび船体まわりの自由表面流れに本法を適用した結果、従来の界面適合(Interface Fitting)法に比べ、数値拡散が強く働くことが分かった。図はシリーズ60(Cb=O.6)船型の波紋図の比較である。しかし、非構造格子法の特徴である局所的な格子細密化と併用することにより、複雑形状まわりの自由表面流れを解析する有力なツールとなることが期待される。

 

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シリーズ60(Cb=0.6)船型の波紋図(上:構造格子、界面適合法、下:非構造格子、界面捕獲法)

 

 

 

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