日本財団 図書館


本専門委員会はこれで終了し、残されたタスクは次期の各委員会に引き継がれることとなっている。

また、本レポートの最後には、この数年における新しい高速船船種の実験的な研究として、WIGおよびハイブリッド船が取り上げられ、近年の研究事例のレビューが掲載されている。

 

Committee on Ice

泉山耕(船研)

 

本特設委員会は、K. Kato (chairman、日本)、W. Nixon (secretary、アメリ力)、S. Jones (力ナダ)、G. Wilkman (フィンランド)、K. Sazanov (ロシア)及びK. Izumiyama (日本)の6名の委員により構成される。3年間の任期中に、横浜(日本)を初回として、ヘルシンキ(フィンランド)、ポツダム及びアイオワ(アメリカ)において4回の会合を持つほか、インターネット、ファクシミリ等による連絡も重ねながら、タスクの消化及び報告書のとりまとめを行ってきた。今回のITTCにおける本委員会からの報告は、会場を上海に移した後の9月9日午後の最後のセッションにおいて行われた。セッションでは、Dr. Bowden (イギリス)の司会の下、Committee chairmanである加藤氏が3年間の活動の総括報告を行った。以下に、3年間における討議の内容等を含めながら、報告の概要を述べる。

今期の委員会における第一のタスクは、模型氷の機械的特性の計測手法に関するガイドラインの作成である。これに関しては、まず、模型氷の曲げ強度・弾性率及び比重について標準的計測手法の提示を行った。これらの計測については、すでに一般的に適当と認知されている手法があり、本委員会においてもこれらをまとめる形で標準的手法の提示を行った。一方、圧縮強度の計測手法については、いくつかの手法が提案されているが、それぞれに短所があることから、本委員会独自のアイディアに基づく新たな試験手法(Floating Uni-axial Compressive Strength Test:以下、FC-test)を、水槽間のround-robin testを行うことにより評価することを試みた。FC-testでは、供試サンプルを氷板内で切り出した後に、これを水面に浮かべたまま、専用の試験機(以下、FC-tester)により一軸圧縮試験に供する。この手法により、従来の手法における問題点は解決される。今回のround-robin testは、各水槽の予定等の事情もあり、5水槽における試験までにとどまったが、本試験法は基本的には有効な手法であろうとの感触が得られた。ただし、今回用いたFC-testerの剛性、構造、作業性等が必ずしも全ての水槽における試験に対して適当なものではなく、実用の場合には各水槽独自の試験機が必要であろう。また、本タスクの一環として、模型氷の破壊靭性の計測手法に関する調査も行ったが、実海氷の破壊靭性自体にまだ不明な点が多く、まずこの点での理解を深めることが重要との結論に達した。

本委員会の第二、第三のタスクは、それぞれ、変形氷及び氷海用海洋構造物に関わる模型試験手法についての調査であるが、これらについては、各国の氷海水槽に対してアンケート調査を行った。なお、変形氷とは、一様の厚さを有する板状の平坦氷が、波力・風力等の外力により変形・破壊・堆積等を起こした状態の氷であり、船舶の航行にとっての大きな障害物である氷丘脈(ice ridge)は変形氷の代表的な例である。本調査では、これら2項目について、それぞれ16及び15水槽に対して調査表を送り14及び13水槽から回答を得た。変形氷の試験法についての調査結果では、各水槽が変形氷、特に氷丘脈について何らかの形で模型試験を行っていることが示されたが、同時に多くの水槽が実際の氷況に対する実測データの少なさという極めて基本的問題が残されていると感じていることも示された。すなわち、各水槽が入手可能な僅かなデータに基づいて変形氷のモデル化について試行錯誤している現状が明らかになったといえよう。この点については、現地計測に関わる各種困難さ、データのconfidentiality等に基づく問題と言えようが、一方、氷丘脈の形成の過程にまで遡ってこれを水槽内に再現しようとする試みが現在フィンランド及び日本で始まっており、この方向からのアプローチの成果も期待したい。また、海洋構造物に関するアンケート結果からも、同様に、信頼に足る実機データの不足を問題とする見解が多く聞かれた。この点については、現在、わが国を初めとして海洋構造物への氷荷重に関する研究プロジェクトが行われているとともに、カナダ・CHCでは、過去の現地計測データをまとめたIce Load Catalogueが作成されつつあり、このような活動の成果が今後の研究の発展に寄与することが望まれる。

以上のタスクに関する報告に引き続いて試験施設及び関連文献のリストの更新について概説した後、ITTC Recommended Procedureに関する報告が行われた。本委員会では、このProcedureの内容について、1]基本的に適当な内容、2]不適当、3]方向性は良いが内容に大きな修正が必要、の3カテゴリーへの分類を報告した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION