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(2.2) 人間要因と操船機器

高速船の操船方法並びに危険領域を特定するために、安全航行報告システムの構築が有効である。

(2.3) 動的安定性

それぞれの不安定動揺の特色を検討した。しかしながら、動的安定性の問題は設計や模型試験の段階において既に検討済みであり、事故の大きな要因ではない。従ってHSC Codeの条項からも排除されている。

(2.4) 耐航性能と大振幅運動

航行中における高速船の性能の全てが、安全性に直接関連してはいない。しかしながら、コース安定性および転覆現象を検討するために模型試験並びに実機試験をさらに行う必要がある。

(2.5) 実機試験

高速船に対する安全性向上のために、さらなる実機試験並びに計測が必要である。

(2.6) Wash問題

高速船の引き起こした新たな安全性の問題として現在注目を集めており、現象の解明と環境への影響などの軽減・防止方法が今後の大きな課題である。

(2.7) 安全性評価

設計手法と模型試験の観点から、各種の高速船について評価基準を示している。

(3) 結論と勧告

総会では、上記の内容が委員長のDr. I. W. DandからOHPを用いて報告がなされた。これに対して、オーストラリアのM. RenilsonからWash、4自由度の操縦性モデル、Bow Diving、高速船の損傷時復原性に関する4件のWritten Discussionが提出された。これが引き金となって、J. V. Pylikkanen (VTT Manufacturing Technology)からは環境に対するWashの影響について、B. D. Loggia (CETENA)からは実機のモニタリングシステムについて、G. Strasser (ウィーン水槽)からは実機試験について、J. O. de Kat (MARIN)からは動的不安定性に伴う安全性についての活発なOral Discussionが行われた。中でもWash問題に関心が集中していたのが印象的であった。

本委員会で取り上げられた高速船の安全性に関する問題は、人命だけでなく環境問題にも関わる幅広い領域のものである。本報告書はこれらの問題点の理解並びに環境への影響の軽減法を示しており、今後も継続して研究していくべきものである。残念ながら本委員会は今期で終了するため、関連する委員会で継続検討を期待する。

 

Committee on Model Tests of High Speed Marine Vehicles

池田良穂(阪府大)

 

4日目の午前中に、同専門委員会の報告が行われた。委員は、D. Ranocchia (委員長)、A. Molland (書記)、S. Abrahamsson、Y. Ikeda、G. Kapsenberg、M. Shin、S. Steen、J. Zseleczkyの8名で、うち4名が出席した。

同委員会に与えられた仕事(タスク)は、第16回ITTCの時に作成された「高速船の模型試験法に関するレポート」の見直しと、アクティブ型の運動制御システムを含んだ高速船の耐航性能評価のための実験法についてレビューし、ガイドラインを示すことであった。

まず最初に、同委員会で実施したアンケート結果が示された。それによると、各水槽で最近実施されている高速船の実験では、滑走艇と半滑走型船および双胴型船のものが大半を占め、他の特殊な高速船の実験は数が少なくなっているのが特徴的との報告があった。なお、このアンケートはかなり広範な質問事項で構成されたものであるが、ページ数制限の関係でごく一部だけが本ITTCプロシーディングス(第2巻)に載せられているだけで、残りは別のレポートとしてまとめられる。

第16回ITTCのレポートでは、高速船の船種別に実験法がまとめられているが、今回の委員会のレポートでは、抵抗、耐航性、推進、操縦性、波浪荷重、ダイナミック・インスタビリティの6つの性能別に、実験手法の進展についてまとめられている。また、抵抗・推進性能だけでなく、耐航性能や操縦性能等の性能についても詳しく触れられている点が、前レポートとの大きな違いと言える。特に、本委員会の2つ目のタスクである耐航性能に関しては、現状の実験手法についての詳しい紹介がなされている。

しかし、本レポートの結論および勧告は3ページにも及んでおり、高速船の模型実験法に関する問題点の多さが浮き彫りにされていることが注目される。抵抗分野では小さな付加物模型の乱流促進法、スプレー抵抗の尺度影響、高速船における形状影響係数導入の妥当性、実船性能の推定手法、伴流およびプロペラ効率の尺度影響などが残された課題とされているが、このうちの大部分は第16回ITTCのレポートにおいても指摘されているものである。また、高速船の操縦性モデルの構築、不安定運動のメカニズムの解明なども重要な課題とされている。

 

 

 

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