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また、本会議の前日には委員会としての最後の意見調整を行った。報告に対しては5件のWritten Discussionが寄せられた。今回の結果を21期のガイドラインの改訂版としてtentative guideで良いから提案すべきであるという意見が土岐氏/星野氏(三菱長崎)および田村氏(長崎総科大)から出された。また安倍氏/平野氏(三井昭島)からは、継続する次期Speed & Powering Trials委員会は本委員会の結果をべ一スとして改訂版を作成すべきであるという意見が出された。本件については、委員会でも議論があり、「改訂版として提案しないのであれば、我々の仕事は何であったのかということになる」という意見もあった。これに対しては、外乱の修正法、不確かさ解析など本委員会として十分検討していないものもあるので、速力試運転に特化して継続する次期委員会がさらに検討を行い、各機関の意見も参考にした上で、21期の改訂版として提案することが筋であるという意見が大勢を占めたため、本委員会では提案しないことにした。一方、21期Powering Performance CommitteeのChairmanであったR. J. Stenson (DTMB)は、ITTCは模型船と実船の相関を求めるための、最小限の修正ですむ試運転手法を纏めるべきであるという意見を述べた。このような考えはいまだに欧米の機関には根強い。従って、日本としても、23期で再び科学的目的のためだけのガイドラインにならぬよう十分注意する必要がある。

次期Speed & Powering Trials委員会はG. Lauro, A. M. Krachtと藤野が辞任し、小柴氏(IHI)、D. J. Yum (現代造船)とR. Fazzeri (イタリア)が新委員となる。造船所の委員が増えたことは日本にとっては心強いことである。なお、速力試運転に注力したため、操縦性試験など他のタスクは十分な結果を得るにはいたらなかった。

 

Committee on Waterjets

池田良穂(阪府大)

 

2日目の午後に同委員会のレポートの発表があった。委員は、J. G. Hoyt (委員長)、M. Zangeneh (書記)、G. Choi、B. Lamberti、P. Lindell、T. van. Terwisgaの6名で、高速船の建造、運航が盛んな欧米からの委員が中心となっており、韓国からの委員がアジアからの唯一の委員で、日本からは委員が出ていない。

最近、ウォータージェット推進船の実験を行うことの多いオランダのマリンやスウェーデンのSSPAからの委員が活躍しているのには、今後も増えるであろうウォータージェット船の模型実験の分野での主導権を握ろうという思惑もあるのかもしれない。

同委員会の座長のホイト氏(米)が、30分の持ち時間を一杯に使って、要領よくこの3年間にわたる同委員会の活動の報告を行った。同委員会に課せられたタスクは、(1) ウォータージェット搭載船の模型船による自航試験法の確立、(2) 試験水槽機関とウォータージェット・メーカーとの協調体制の推進、(3) 実船での試験結果の収集の3つに大きく分けることができる。

(2)のメーカーとの協調体制の確立のため、同委員会では会合を企画し、欧米のメーカー10社が参加した。その会合で、メーカーは、現在のところ、それぞれの経験に基づくデータベースに基づく方法によって、船体とジェットとの干渉を予測しており、せいぜい使っているのは模型船の抵抗試験だけであること、従来は小型ボート用のウォータージェットが主流だったこともあり、広範な模型試験や実船試験の実施は経済的にも難しかったこと、同委員会で検討しているウォータージェットポンプのクローズド・ループ試験、ウォータージェット・システムのオープン・ループ試験、および模型船の自航試験法についても興味をもっていることが分かるなどの成果があがった。一方、自航試験法については、全く新しい船型とか、今までの経験からは類推できないように高速である等の特殊な場合を除けば必要がないのではないかとの見解であったとの報告があった。

次に、最近の研究成果のレビューが、模型実験法、実船試験、初期設計における推定手法、CFDの応用、模型実験結果のそれぞれについて成された。

本委員会の大きな目標である、ウォータージェット推進船の性能推定法としての自航試験法の確立に関しては、推力を運動量から求める手法と直接推力を測定する手法の2手法を評価し、信頼できかつ経済的にも受け入れられる手法とすることが必要であり、今後、多くの水槽においてシリーズ試験を実施し、試験手法の評価、数値推定法との比較、不確かさ解析を実行することを提案している。

 

Committee on Unconventional Propulsors

山口一(東大)

 

この委員会の構成は、N. Bose (Chai?an、カナダ)、M. Billet (Secretary、アメリカ)、P. Anderson (デンマーク)、M. Atlar (イギリス)、W. Qian (中国)、Y. Shen (ベルギー)の8名で、日本からの委員はいなかった。

 

 

 

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