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98年の11月にポーランドのグダンスクで行われた最後の会合で初めて、委員7人全員が一堂に会することができた。

本会議における委員会報告は初日の午後2番目に、前のセッションに引き続き、加藤教授の司会の下に行われた。本委員会委員のうち、イギリスおよびポーランドの委員が欠席した。委員長のJ.-T. Leeによる報告は、パソコンのプレゼンテーションソフトの1つであるMicrosoft Power Pointを用いて行われたが、見映えが良いだけではなく、内容も理解しやすいようにまとめられていた。報告の概要は次のとおりである。

まず、キャビテーション現象の種類について簡単に説明がなされた後、本委員会で行ったアンケートの集計結果が示された。このアンケートとは、ITTC参加機関において、どのようなキャビテーション計算法が用いられているかを問うたものである。計算法を大きく分類すると、揚力面理論、境界要素法およびCFDの3種類となるが、揚力面理論を使用している機関が最も多く、以下、上記の順番となっている。さらにこれらの方法について、その概略および特徴、適用範囲、今後の発展性や可能性などについて説明がなされた。本委員会としては、計算法を選ぶ指針を示す必要があるが、現段階において明確な指針を示すのは困難であるとして、キャビテーションの種類ごとに、どの計算法がそれぞれのキャビテーションの初生およびパターン予測に相対的に向いているかを、low、mediumおよびhighの3段階で評価した表が示された。最後に、今後の課題として、(1) 計算法の精度と信頼性を評価するために、揚力面理論と境界要素法を用いたプロペラ・キャビテーションの比較計算のワークショップを開くこと、(2) 境界要素法とCFDが今後どのように発展するかに注意すること、の2点が挙げられた。

1つの特設委員会に割り当てられた時間は75分(報告30分、討論45分)であるが、本委員会の説明は30分弱で終わり、書面討論が1件しかなかったため、討論時間には十分な余裕が残された。この他に、会場から4件の口頭討論があったが、予定より約20分早くこのセッションは終了した。

討論は、バブルキャビテーションとシートキャビテーションが混在する場合のパネル法(境界要素法)によるモデル化、キャビテーションの初生、楊力面理論における翼前縁の修正、キャビテーション発生位置、などに関するものであった。

なお、本委員会は今期限りで終了するが、キャビテーションの計算法は今後さらに発展することが予想されるので、何年か後に同様なタスクが実施されることが望まれる。また、キャビテーション計算法についての文献がすべて同じ翼やプロペラを対象にしているわけではないので、どの方法がどの程度有効なのかを判断することは難しいというのが、本委員会委員共通の認識だった。文中に述べたようなキャビテーションの比較計算ワークショップ開催の提案は、このような理由によるものである。また、特にキャビテーションの初生については、計算ではなく、経験的方法による予測が用いられる場合が多いようであり、しかも、文献として公表されている例が少ないため、議論の末、本委員会では取り上げないことにした。今後、キャビテーション計算法がさらに発展することが望まれる。

 

Committee on Trials and Monitoring

藤野良亮(石川島播磨重工)

 

本委員会の報告は、会議2日目の1番目のセッションで行われた。朝一番ということで司会者が遅れ、加藤教授の司会代行のもとに報告が始まった。

委員会のメンバーは、G. Lauro (Chairman、イタリア)、E. Woo (Secretaly、アメリ力)、P. Perdon (フランス)、A. M. Kracht (ドイツ)、L. Murawski (ポーランド)、J. Thomas (イギリス)、藤野(日本)の計7名の予定であったが、第1回会合直前にJ. Thomasが退任を表明して、代わりのないまま残りの6名でスタートした。委員の所属は、研究機関が4名で内2名が艦艇の試運転計測を専門にしている。残り2名が造船所の委員である。

21期Powering Performance Committeeで提案された速力試運転のガイドラインは、あまりに理想状態での科学的な試運転を強調しすぎたため、造船所、特に日本の造船所の委員から現実の商船の試運転にそぐわないとして多くの反対意見が出された。このガイドラインの見直しが本委員会の主要なタスクである。3年間の任期中になされた会合はGenova (1996.12)、Paris (1997.8)、横浜(1998.5)、Wasington (1998.9)、Genova (1999.1)の計5回であり、熱心な討論がなされた。横浜で開催した第3回会合では、日本の各造船所の専門家も交えたjoint meetingを開き、意見を交換した。各委員がこのmeetingにより、商船を主体とする造船所の立場及び試運転のあり方をある程度理解するに至ったことは特筆すべきことである。関係者のご協力に改めて感謝する次第である。

本会議での報告には4名の委員が出席した。Chairmannとして活躍したイタリアのG. Lauroと若手のポーランドのL. Murawskiが多忙のため出席できなかったのは残念であった。

 

 

 

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