しかし、そのために4〜6個の窓を開けるのでは大変であり、それがために実行されない可能性もある。もう少し減らせないか?」との質問があった。「片舷2個で合計4個。片舷だけだと2個になるが…」という答えであったが、司会の加藤教授から、「現在では超小型のCCD-TVカメラがあるから、船体に窓を設けるのではなく、それを船体外板に取り付けることもある」という指摘(助け舟)があった。Committeeとしては正に渡りに船で、「そのとおり」ということであった。次にパリ水槽の人(筆者はお名前を存じない)から、「試験時のReference Velocityの取り方」について質問があった。Tangential Velocityも大切であるという指摘で、色々と仰っていたが、残念ながら筆者のメモでは、詳細が記録されていない。とにかく、「基本は推力一致法である」という答えで、ご納得頂いたように記憶している。右近氏(船舶技術研究所)から、新たな情報として、プロペラ上部の船底に気泡層を設けることにより、変動圧が10-40%にまで下がったという船研での模型実験結果が、紹介された。次にQuality Systems GroupのG. Strasser (オーストリア)から、「報告には、試験手法についての勧告が最後に纏めて書いてあるが、途中にも書いてある。どう解釈すれば良いのか。Proceedings Vol.3に新たな纏めを書くのか」という質問があった。委員会としては、最後に纏めた勧告はあくまでも纏めであり、その詳細を内部に記載しているのであるから、矛盾したことは書いていないのだが、Quality Manualを作りたいというQuality Systems GroupのChairmanとしては、簡単にことを済ませたかったのかも知れない。
T. van Terwisga (MARIN、オランダ)から、「模型実験における変動圧計測誤差の一因となるキャビテーションの間欠性の原因には、キャビテーション核、翼毎の仕上げ誤差、乱れ強さなど、幾つか考えられるが、とにかく、低Reynolds数では問題がある。最小Reynolds数を示せないか」という質問があった。大変もっともな質問であるが、模型Reynolds数を高くできないから、各キャビテーション水槽にて前縁粗さや気泡核供給などの手段を講じているのであり、答えにくい質問である。Committeeとしての答えも、「本当をいうと、最小Reynolds数は2,000,000〜3,000,000であろうが、とてもこのような高いReynolds数では実験できない」ということであった。次に、HSVAの人(等者はお名前を存じない)から、「プロペラ変動圧により、ラダー・ホーン部での損傷が起きることもあるから、実船試験手法の勧告に、ラダー・ホーン部での変動圧計測も含めるべきではないか」との質問があった。答えは、「御指摘のとおりだが、現実には圧力計を設置する場所(スペース)が問題となろう」ということであった。
最後に、星野氏(三菱長崎)から変動圧持ち回り試験結果について質問があった。「日本の水槽の結果は、プロペラ回転数が高くなる程変動圧が上がってゆき、30rps位で落ち着いている。これは、キャビテーションの間欠性が少なくなってゆくことで説明できそうだが、韓国の水槽の結果の回転数影響が複雑である。これには、タンネルと計測系固有の周波数特性があるのではないか」との指摘があった。答えは「韓国の水槽にて周波数特性も計測しているが、そのような特殊な周波数特性が見られたという報告は受けていない。しかし、あり得ることだろう」ということであった。
以上の討論及び回答は、筆者が現場で書き記したメモを基に書いている。これらの討論の内、後刻書面討論になったものについては、回答とともにProceedings Vol.3に掲載される予定であるから、そちらを御参照願いたい。
今回、多くの特設委員会の改組が行われたが、このCommitteeはほぼそのまま次期に継続することとなった。新しい委員構成は、J. Friesch (Chairman、HSVA、ドイツ)、佐々木(住重)、K. H. Kim (NSWC、アメリカ)、B. J. Chang (HMRI、韓国)、G. Bark (Chalmers U/SSPA、スウェーデン)、P. Anderson (TUD、デンマーク)、F. diFelioe (INSEAN、イタリア)の7名になったようである。FrieschとBarkが継続である。また、Changは、前任のH. G. Leeの代理として、22期ITTCのCommittee会合に1度参加している。22期ITTC以上の成果を期待したい。
Committee on Computational Methods for Propeller Cavitation
安東潤(九大)
本委員会は、J.-T. Lee (韓国)を委員長とし、K.-H. Kim (Secretary、アメリ力)、L. Briancon-Marjollet (フランス)、P. G. Esposito (イタリア)、M. Stanier (イギリス)、J. A. Szantyr (ポーランド)、安東(九大)から構成されている。
本委員会のタスクは、(1) キャビテーションの初生やパターンを予測する計算法の評価と、(2) 計算法を選ぶ指針の作成の2つであり、本会議までに計4回の会合が持たれた。