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3年間の任期中になされた会合は4回(トロンハイム、ブリュッセル、ワシントン、ジェノバ)で特に第2回目の会合にはSchmiechen、仲渡両名を含む6名が参加し、1999年度版に向けたリストの具体的改訂作業を行った。第3回会合では所用で出席できない筆者に代わって仲渡名誉教授に出席いただくなど、最後の最後まで前任者の仲渡名誉教授にはお世話になった。また、これとは別に、委員長とは98年1月に筆者が訪米した折り面談し、特にWeb化に関する技術的問題やこのグループの今後のあり方について2日間にわたって討議した。筆者としては初めて参加したITTCの活動であるが、アットホームでこじんまりとした、しかし、技術的問題になると口角泡を飛ばすといった感じのグループであった。

発表では、型どおりに委員、会合、前期の勧告の紹介の後、今回のリスト改訂の要点が紹介された。主な項目は次のとおりである。Stability委員会との連携により浮体安定性(特に動的)および静力学に関する記号と用語が追加された。Water Jet委員会との連携により、Water Jetの章は推進器そのものと推進性能に関する章に分割された。環境メカニクスの章ではIAHR (The International Association of Hydraulic Engineering Research)の海象パラメータのリストが引用され、また風に関する記述が大幅に追加された。

さらに、現在1975年版の古めかしい(Clarkeのことば)リストに基づいているISO Standard 7462/7463(コンピュータ利用に関する造船記号)を早く1999年版にそろえるようISOに働きかけることが要請された。また、ISSCやPrinciples of Naval Architectureのリストとの不整合性も報告された。

最後に、今後、リストのWeb化に関しては現在のHTML形式からXML形式(数式やギリシャ文字が扱える)に環境が整った段階で移行すること、図面に関してはまだ適当な環境がそろっていないので今後の課題であることなどが報告され、質疑応答に移ったが、書面討議はなく、1件、応援演説的な口頭でのコメントがあっただけであった。

本グループは今期で終了し、次期よりQuality Manual Groupに用務が移る。これまでのグループ委員各位の活動に感謝しつつ、グループの活動全般についての報告とさせていただく。

 

3.2 特設技術委員会

Committee on Cavitation ― Induced Pressure Fluctuations

山口一(東大)

 

この委員会の報告は、加藤教授(東京大学名誉教授。現、東洋大学教授)の司会の下、初日の午後に行われた。出席者は、130名程度はいたものと記憶している。委員は、M. Wilson (Chairman、アメリカ)、J. Friesch (Secretary、ドイツ)、G. Bark (スウェーデン)、G. Caprino (イタリア)、H.-G. Lee (韓国)、D. Sadovnikov (ロシア)、山口(東大)の7名で、計4回の委員会が開かれ、活発な議論が行われた。韓国からの委員が2度欠席したが、内1度は代理を立てたため、4回の委員会中、欠席者は僅か1名が1回のみという優秀な委員会であった。

本会議での報告には、スウェーデン、韓国の委員を除く5名の委員が出席した。スウェーデンの委員は所属組織の予算カットのため、韓国の委員は昨年からロシアのSt. Petersburg駐在員として彼の地に滞在中のため出席できず、残念なことであった。

発表は、ChairmanのM. Wilsonにより行われた。すべて美しいカラーOHPを用い、内容も良く整理された、分かり易い発表であった。報告書の内容は、1. 委員構成と会合履歴、2. 序、3. 関連する流体現象の解説、4. 変動圧の予測計算、5. 変動圧の実船計測、6. 変動圧の模型試験、7. 変動圧軽減法、8. 持ち回り試験結果、一般的技術的結論、試験手法に付いての会議への勧告、将来課題の勧告、となっている。発表は多少順番を変更した項目もあったが、全ての項目を分かり易く要約して説明された。

この委員会報告の詳細は会議Proceedingsに譲るが、実船試験、模型試験とも、試験の際計測すべきもの、計測しておいた方が良いものなど、項目分けして分かり易く示され、また、試験結果として示すべき事柄なども明記され、ガイドラインとして有益なものが得られたと思う。その他、前期ITTCのCavitation Committeeにて、日本国内のキャビテーション水槽で行われた変動圧持ち回り試験が、今期は韓国で行われたことも報告された。比較結果は必ずしも簡単に解釈できないが、キャビテーション水槽で変動圧試験をする際には、プロペラ回転数の影響をしっかりと見ておくべきであることが指摘された。

このCommittee報告には事前の書面討論がなく、最初どうなることかと思われたが、7人から活発な口頭討論があった。G. Kuiper (MARIN、オランダ)は、「実船試験で計測する項目として、キャビテーションの観測を必須にするのは大賛成である。

 

 

 

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