セッションでは、まずチェアマンのS. CordierそれにM. Vantorreの2人から、液晶プロジェクタを用いて報告書の概要説明がなされた。続いて、Written Contribution及びOral Discussionによる討論が行われたが、それぞれ3件、2件と、いささか盛り上りに欠けるセッションとなった。
報告は、まず本委員会のTaskの確認に始まり、続いて、これまでの研究成果(公表論文)に基づき、1) 操縦流体力推定法、2) 操縦運動計算法、3) 操縦性における尺度影響、4) 船舶の運航、安全性、5) 操縦性模型試験法の5項目について、技術の現状及びその応用に関する報告がなされた。また、5)の模型試験法に関連して、Quality Systems Group (QSG)からの要請とも関連して作成された6) Captive Model Test Procedureについての説明がなされた。続いて、7) Esso Osakaを用いたBench Mark Studyの報告が行われ、最後に、Technical Conclusions及びRecommendations (総会、次期委員会の課題)を示して報告が終了した。
上記報告の詳細は省略させて頂くが、次の3点について簡単に触れておきたい。第1の点は、4)に関連してIMOの操縦性基準に関する議論が、ITTCの場でも盛んであったことである。特に、RR74委員会の研究成果及びそれに基づいたIMOへの日本提案の内容には、Written Contributionも含めて関心を寄せる人が結構多かった。これは、比較的最近建造の船型についての豊富な実船試験結果の収集が高く評価されており、操縦性基準の是非に関する議論が、一層盛んになることを期待したい。
第2の点は6)についてである。本委員会では、ITTCメンバーの各機関にQuestionnaireを送付して、拘束模型試験(PMM, RAT, CMT)に関する試験装置/水槽施設、試験法、解析法に関する調査を行い、その結果をべ一スとして、新しくCaptive Model Test Procedureを作成した。必ずしも完成されたものではないが、いろいろと注文の多いQSGチェアマンのG. Strasserからは“Perfect”のお言葉を頂き、委員一同ほっとしたものである。
第3の点は、7)についてである。本Studyは、操縦流体力に関するBench Mark Dataの開発/整備を目的として、今期から始めたものであるが、実質2年間の活動期間では、新たなデータ(模型実験、理論計算ともに)の収集は難しく、残念ながら、あまり新味のない報告となってしまった。幸いにも、次期ITTCでは、Specialist Committeeとしての“Esso Osaka”Committeeが発足する。この委員会は、General CommitteeとしてのManoeuvring CommitteeのWorking Group的性格のものであり、Bench Mark Dataの検討は当然のこととして、操縦運動数学モデルの高度化といった、より高度な課題にまで踏み込んだ議論がなされることを期待したい。
IMOの操縦性基準に関連して、操縦性能推定の高精度化は、操縦性能研究分野での最重要課題であろう。ITTCの場でも、上記2つの委員会の活動を通して、今後日本に期待される役割は益々大きなものになると思われる。
Quality Systems Group
山口眞裕(船研)
韓国ソウルから中国上海へ移動した翌日の木曜日の午前中のセッションは、ドイツのハンブルグ水槽のDr. G. Jensenの司会でQuality Systems Group(以下ではQSGと記す)の報告が始まった。
QSGの今期の主要な業務は、ISO 9000をそれぞれの機関が導入する際のガイドラインを用意し、今までのITTCの総会で報告されたRecommended Proceduresを一つの資料としてまとめるとともに、その内容について関係する技術委員会と連絡をとって更新することであった。QSGは委員長のProf. G. Strasser (ウィーン水槽)、幹事のMs. B. Gunter (ポッツダム水槽)とMr. A. Bednarek (グダンスク)、Dr. Y.-G. Lee (仁荷工科大学)と小生で構成され、会合は5回開催された。
第1回の会合で早速作業に掛かり、ITTC総会の第9回あたりから前回の第22回までのProceedingsを皆で目を通し、Recommended Proceduresと思しき部分をかき集め、それらを委員長が主体になってまとめることとした。そして、パラメーターの収集整理、ベンチマークテストのデータ収集と整理、および、水槽試験の計測機器の整理をそれぞれ、担当を決め作業した。実験や計算に使用するパラメーターは、最終報告書を検討した本年3月のグループ会合の最後に提出された。残念ながらこのパラメータは今回の資料には載っていないが、次期グループで活かされることが望まれる。小生の担当は、ベンチマークテストのデータ収集と整理であった。最近のResistance技術委員会のように精力的に作業されているものもあるが、大部分の技術委員会はまとめていないことが多く、よってITTCの持ち回り試験や同じ船型の比較試験あるいは計算をこれにあてることなどして資料にまとめた。