早い時期での交代であったため、報告書とりまとめ等での不具合は発生しなかった、なお、J. T. Ligtelijnの後任委員としてはJ. Holtrop (オランダ)が選任された。また、B. Gindrozもフランス水槽(BEC)のリストラの関係でBECを止めることになったが、委員としての務めは最後まで果たした。
本委員会としての会合は、上海 (1997.1)、Val de Reuil (1997.9)、Grenoble (1998.4)、San Diego (1998.11)の計4カ所で開催された。フランスで2回の開催となったのは、本委員会主催のワークショップ“Propeller RANS/Panel Method Workshop”をGrenobleで開催されたCavitation '98 Symposiumに合わせて、同所で開催したためである。2回の委員会開催を快く担当して頂いたB. Gindrozに感謝したい。
本会議には、B. Gindroz及びJ. Holtropを除いた6名の委員が出席した。事前打ち合わせは、発表が初日の午前中ということで時間がなく、当日の早朝行った。全員が集まり、Written Discussionに対する回答の割り振りと内容に関する打ち合わせを行い総会に臨むことにした。発表は、Committee ChairmanのJ. V. Pylkkanenが報告書の概要をOHPを用いて行った。本委員会のTaskとしては、(1) プロパルジョン分野の研究のレビュー、(2) ITTC推奨手法のレビュー、(3) 新しい手法の必要性の指摘、(4) プロパルジョン分野の文献集の更新、(5) プロペラの理論設計・解析手法のレビューと比較計算Workshopの企画開催、(6) 特殊な作動条件下におけるプロペラ性能に関する研究のレビュー、(7) プロペラ関連のLDV及びPIVデータのレビュー、(8) キャビテーションの初生・安定性と液体特性(気泡核分布、表面張力)の関係のレビュー、の8項目があり、それぞれの項目を省略せずに発表したため時間不足となり、最後の2項目に関してはほとんど内容に触れない報告となったのは残念であった。
本委員会では、特に“Propeller RANS/Panel Method Workshop”に力を入れて取り組んだ。ITTCへの登録機関を中心に比較計算への参加を呼びかけた結果、20th ITTCでのWorkshopを越える20の研究機関が計算結果を提出し、二日間に亙るWorkshopへの参加者も多く盛会であった。本Workshopに提出された全データをProceedingsとして取り纏め、ITTCへの全登録機関に配布されている(はずです?)ので、今後の比較計算をされる方はこれを参照下さい。比較計算のための貴重なデータを提供頂いた船研の右近氏、前回の貴重な経験を御教授頂いた船研の小山氏を初め、Workshopを支援して頂いた関係者の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。
本報告に対しては、5件のWritten Discussionが寄せられた。P. LiuはRANS/Panel Method Workshopに関し、計算結果の更新の提案、ベンチマークデータのITTCシンボルリストによる定義、荷重度の高いところではRANS/Panel Method共に実験と合わないことを指摘した。J. Bosschersは、同様にWorkshopに関連して、Panel Methodで翼端部の重要性を指摘し翼端部での圧力分布の比較計算及びグリッド分割を含めたデータを提供しての比較計算を提案した。T. van Terwisgaは、「加減速中の船舶のプロペラ性能計算手法として非定常非線形VLMが有効」との委員会結論に対し、実際の大型船舶の加減速(非常にゆっくりしている)を考えた場合この結論は疑問であり、準定常で十分ではないかとの意見を述べた。また、準定常に代わり非定常計算が必要となるguidelineを示して欲しいとの要望があった。川並等は、プロペラキャビテーションに対するRn影響を指摘し、回転数を上昇させたときと下降させたときでキャビテーションにヒステリシスが発生することを示し、プロペラのキャビテーション試験は、Rn影響のない充分高いRnで実施すべきであるとの意見を述べた。CWB Grigsonは、平板の摩擦抵抗式の精度を実験により検証すべきであることを指摘した。これに対し、各委員より回答を行った。また、Oral Discussionも5件と多く、発表時間を超えた活発な報告となった。
本委員会の委員の一人である上海交通大学のWang教授より、第1回目の会合を1997.1.に上海で開催し、総会までの2年半の間における上海の変化を全員で見て欲しいとの申し出があり同所で1回目の会合を持った。確かに、この2年半の間に多数の高層ビルが建ち並び、道路の幅が広がり、車の数が増え、近代化された町へと変貌を遂げていた。会場が町の中心から離れていたためでもあり、前回のように自転車及びバイクが道路全面を覆うという光景は見られなかった。上海の人にとっては、町全体が近代化されきれいになるのは良いことなのかもしれないが、外部の人間にとっては上海の特徴が失われていくようで残念な気もする今回の総会であった。