【4】その他盲導犬使用環境の整備
(1)検疫制度と運用上の諸問題
最近は、盲導犬を伴って諸外国を旅行する盲導犬ユーザーが多くなっている。盲導犬ユーザーを対象にした団体旅行が企画されるほどであり、盲導犬ユーザーにとっては望ましいことである。
ここで問題になるのが、盲導犬を伴って出入国する場合、検疫を受けなければいけないことである。検疫(この場合、動物検疫)とは、動物や畜産物を輸出入する際に、家畜伝染病予防法及び狂犬病予防法に基づいて実施される検査や一連の手続きである。盲導犬を伴っての出入国は、本来の意味の輸出入ではない。しかし、盲導犬に対する特別な取り扱いを認める規定はなく、輸出入と同じ扱いになっている。但し、運用上、盲導犬の役割や管理がいきとどいていることが考慮され、一定の条件が整っている場合、入国の際の検疫は自宅係留による方法がとられている。盲導犬の役割に一定の理解が得られている証であるが、いくつかの問題が残る。たとえば、係留期間中、盲導犬ユーザーが盲導犬と共に動物検疫所、または動物検疫所支所に出向き、盲導犬の健康に関する報告をしなければならないケースがある。このようなケースではユーザーは時間と費用の負担を強いられる事になる。家畜防疫官の訪問による検査、あるいは動物病院における検査など運用のさらなる改善を要望したい。
(2)盲導犬との離別、死別に対する心のケア
盲導犬との離別、死別に対する心のケアのための窓口となる相談センターを設置する必要がある。ペットロスの予防、ペットロスになった人が早く回復するためにはカウンセリングを受ける必要がある。
本調査でも、現ユーザーにとって大きな問題として挙げられており、相談窓口の必要性は確認されている。しかしながら、その方法論についてはさらなる検討が必要と思われる。なぜなら、現在こうした盲導犬ユーザーの心のケアについては、専門家がいないためである。
情報提供という意味では、ホームページ等いつでも見られるところに情報を提供したり、いつでも書き込みができたりという方法が現実的であろう。しかし盲導犬ユーザー及びユーザーの生活に関わる人達でインターネットを行っている人はまだまだ限られた層であろう。また盲導犬との離別・死別に対しても、経験者が一番気持ちがわかるはずである。心のケアについてはユーザー同士で話し合える場の提供が必要である。どのような機関で担当するかは別にして、盲導犬の離別・死別など、ユーザーにとって深刻な問題についての相談窓口を設置することが重要と言える。